無口な人魚姫と粗暴な海賊
 ミーシャの普段の仕事は主にダリオスの雑用だ。

 休憩時にコーヒーを入れたり、必要のない書類の処分や残党の処理なんかを任されている。

 いつものダリオスが与える仕事は簡単なもので『頼んだ』と口調は軽い。

 だから、ダリオスがミーシャに改まって仕事と口にするのは初めてだった。

 そんなダリオスを見て、ミーシャの背筋が自然と伸びる。


「ミーシャには明日から、パールの側仕え兼護衛になってもらう。」

「パール様とは、ダリオス様が連れてこられた方ですよね?」

「ああ。」

「ダリオス様の()()()()を私なんかがお仕えしてもよろしいのでしょうか?」


 ダリオスはサッと足を下ろし、立ち上がるとミーシャのでこをピンっと弾いた。

 ミーシャはスっとでこを両手で抑えるが、赤くすらなっていない。


「私なんかって自分を下げんな。いつも言ってんだろ。パールの側仕えに関しては、お前が一番適任だ。」

「しかし、パール様はお姫様ですよね?私のような元奴隷が仕えて良い方だとは思いません。」

「またお前はそんなことを言いやがって。いいか、お前はこの俺の船員で、俺はお前の優秀さを見込んで乗せたんだ。無能な奴なら最初からこの船には乗せねぇ。
それになぁ!元の身分なんかこの船では関係ねぇんだよ。パールも、ンなこと気にするようなやつじゃねぇ。」

「……獣人族でもですか?」


 ダリオスがニヤリと笑う。


「はっ。パールは人魚だ。言ったろ?適任だ。って。」


 ミーシャは硬く固まっていた顔を綻ばせ、クスッと笑った。


「承知致しました。パール様の身近なお世話並びに護衛。ダリオス様の船員、ミーシャがしかと受け賜りました。」

「責任重大だからな。」


 ダリオスが冗談めかしで言う。

 責任重大なのは確かだが、気負うなというダリオスの優しさの片鱗が現れた言い方だった。
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