夜を繋いで君と行く
怜花の手に律の手が触れた。触れたと思った時には、指先が優しく握られていた。
「一人だったら、別に何にも興味、もててなかったよ。家でテンション低いんだって、前に電話で話したじゃん?」
初めて律から電話が来た日。怜花が渡したおかずのお裾分けが美味しかったことを伝えるためだけの電話だった。電話だったから静かに聞こえたのか、本人が会っているときよりも静かだったのか、あの日の怜花には判断が難しかった。
「…覚えてるよ。会って話してるときと全然違って、驚いたし…無理して美味しいって言ってるのかなとも思うくらいで…。」
「それは前も今も絶対ないんで、誤解しないで。…家っていうものが好きじゃないってだけだから。家で一人になって何かやりたいとか、面白そうとか思うこと、全然なかった。声優の仕事だけは唯一楽しかったから、それに関係するものを家でやることで時間を潰してたけど、…怜花が家に来てくれたから、面白いって思うものが増えたんだよ。あと…。」
怜花の指先を握る律の手の力がわずかに強くなった。それに応じて怜花が顔を上げると、律の額がそっと怜花のものに重なった。律の目はゆっくりと閉じられた。
「家に色がついたみたいだった。怜花がいる時間は、ずっと。家で過ごすってことが嫌じゃないのは、怜花があったかいからだよ。」
「あったかいかな…?どちらかといえば手は冷たい方なんだけど。」
「あったかいよ。…なんていうか、してくれることがあったかい。作ってくれるものもだけどさ、俺が手伝いたいって言っても全部見ててくれるし、ふざけたこと言っても割と乗ってくれるし。優しくてあったかいの。だから、他にもやってみたいなって思える。それを口に出しても、絶対この人は馬鹿にしないし、見ててくれるし、見捨てないってわかるから。」
それはそっくりそのまま、律に返したい言葉だった。怜花がどんなにぐちゃぐちゃになってしまっても、どれだけ泣いても温かい場所を用意して、手を引いてくれたのは律だ。
「…律もでしょ、そんなの。」
「できてる?」
「ずっとできてるよ。…十分すぎるくらい。」
「でもまだまだやるんで。とりあえずこれは俺運ぶね。このまま持っちゃっていいの?」
「いいよ。私の荷物もあとちょっとだから。」
「ゆっくりで大丈夫。これ、玄関置いたらもうちょっと怜花の部屋、堪能してもいい?」
「…堪能するほど、見るものあるかな?」
「見るものっていうか、怜花の空間ーって感じがたまんないんだって。」
「…よくわかんないな、それ。」
「一人だったら、別に何にも興味、もててなかったよ。家でテンション低いんだって、前に電話で話したじゃん?」
初めて律から電話が来た日。怜花が渡したおかずのお裾分けが美味しかったことを伝えるためだけの電話だった。電話だったから静かに聞こえたのか、本人が会っているときよりも静かだったのか、あの日の怜花には判断が難しかった。
「…覚えてるよ。会って話してるときと全然違って、驚いたし…無理して美味しいって言ってるのかなとも思うくらいで…。」
「それは前も今も絶対ないんで、誤解しないで。…家っていうものが好きじゃないってだけだから。家で一人になって何かやりたいとか、面白そうとか思うこと、全然なかった。声優の仕事だけは唯一楽しかったから、それに関係するものを家でやることで時間を潰してたけど、…怜花が家に来てくれたから、面白いって思うものが増えたんだよ。あと…。」
怜花の指先を握る律の手の力がわずかに強くなった。それに応じて怜花が顔を上げると、律の額がそっと怜花のものに重なった。律の目はゆっくりと閉じられた。
「家に色がついたみたいだった。怜花がいる時間は、ずっと。家で過ごすってことが嫌じゃないのは、怜花があったかいからだよ。」
「あったかいかな…?どちらかといえば手は冷たい方なんだけど。」
「あったかいよ。…なんていうか、してくれることがあったかい。作ってくれるものもだけどさ、俺が手伝いたいって言っても全部見ててくれるし、ふざけたこと言っても割と乗ってくれるし。優しくてあったかいの。だから、他にもやってみたいなって思える。それを口に出しても、絶対この人は馬鹿にしないし、見ててくれるし、見捨てないってわかるから。」
それはそっくりそのまま、律に返したい言葉だった。怜花がどんなにぐちゃぐちゃになってしまっても、どれだけ泣いても温かい場所を用意して、手を引いてくれたのは律だ。
「…律もでしょ、そんなの。」
「できてる?」
「ずっとできてるよ。…十分すぎるくらい。」
「でもまだまだやるんで。とりあえずこれは俺運ぶね。このまま持っちゃっていいの?」
「いいよ。私の荷物もあとちょっとだから。」
「ゆっくりで大丈夫。これ、玄関置いたらもうちょっと怜花の部屋、堪能してもいい?」
「…堪能するほど、見るものあるかな?」
「見るものっていうか、怜花の空間ーって感じがたまんないんだって。」
「…よくわかんないな、それ。」