夜を繋いで君と行く
* * *
12時を少し過ぎた頃、いつも通りに家に戻った。いつもと違うのは怜花がベッドで寝ていること、そして怜花の空気が同じ空間に漂うことかな、なんて思いながら仕事後のルーティン通りに手洗いうがいをし、シャワーをさっと浴びてリビングのドアを開けた。室内に外で着ていた服はなるべく持ち込まず、帰宅時はすぐに風呂に入る、というのを基本は守っている。体調をそう簡単に崩すわけにはいかないという職業柄のものもあるが、怜花の体調が崩れる要因を自分が作るわけにもいかないと思う気持ちも、今日は強かった。
ソファに目を向けて、ハッとした。ベッドにいるはずのその人はなぜかソファで眠っている。暖房を少し高めに設定しておいてよかった。あと、自分が言ったことを守って下手に下げたりしないでくれてよかった、と心底思う。電気をつけたまま寝てしまったところを見ると、不意に睡魔がやってきたようである。
怜花の寝顔がよく見える位置に、静かに腰を下ろした。ぎゅっと抱きしめられたクッションが少しだけ憎い。場所を代わってほしいと真剣に思うが、クッションという丸くてふわふわなものを抱きしめるということが、より一層怜花の可愛さを高めている気がするので、仕方なくクッションを許すことにした。
「…なんなの、ほんと。寝顔も可愛いの。死角なしだね。」
意図せず見れた寝顔に、仕事の疲れが吹っ飛ぶどころの騒ぎではなかった。静かな空間に、自分の心拍だけが異常な音を刻んでしまっている。怜花は、朝何度か自分の寝顔を見たときに、どんなことを思ったのだろう。今自分が抱えている、可愛くてどうしようもないなんて気持ちではないだろうな、だとしたらなんだ?という、怜花に直接ぶつけるしか回答の得られない問いまで浮かぶ始末だ。
律はゆっくりと立ち上がった。まずは寝室の布団をめくって、怜花を寝かせるスペースを確保してからでないと、スムーズに移動させられない。そう思って一度、寝室に向かってドアを開けっぱなしにしてからまたリビングに戻ってきた。
すやすやと眠る怜花をそっと抱きかかえ、自分の胸にぐっと近づける。
「…はぁー…なにこれほんと、可愛すぎない?すごっ…。」
「ん…。」
怜花の片目が、眩しそうに開く。両目がゆっくりと開いて、ふわふわした焦点がおそらく今、律に合った。
「ん…ん!?あ、あれ!うわごめん!な、なんで律…?お、おかえり!」
はっきりと覚醒したらしい怜花の慌てっぷりがこれまた可愛くて、律はプッと吹き出した。
「ただいま。寝ててよかったのに。とりあえずこのまま運んじゃうからじっとしてて。」
「へっ!?」
12時を少し過ぎた頃、いつも通りに家に戻った。いつもと違うのは怜花がベッドで寝ていること、そして怜花の空気が同じ空間に漂うことかな、なんて思いながら仕事後のルーティン通りに手洗いうがいをし、シャワーをさっと浴びてリビングのドアを開けた。室内に外で着ていた服はなるべく持ち込まず、帰宅時はすぐに風呂に入る、というのを基本は守っている。体調をそう簡単に崩すわけにはいかないという職業柄のものもあるが、怜花の体調が崩れる要因を自分が作るわけにもいかないと思う気持ちも、今日は強かった。
ソファに目を向けて、ハッとした。ベッドにいるはずのその人はなぜかソファで眠っている。暖房を少し高めに設定しておいてよかった。あと、自分が言ったことを守って下手に下げたりしないでくれてよかった、と心底思う。電気をつけたまま寝てしまったところを見ると、不意に睡魔がやってきたようである。
怜花の寝顔がよく見える位置に、静かに腰を下ろした。ぎゅっと抱きしめられたクッションが少しだけ憎い。場所を代わってほしいと真剣に思うが、クッションという丸くてふわふわなものを抱きしめるということが、より一層怜花の可愛さを高めている気がするので、仕方なくクッションを許すことにした。
「…なんなの、ほんと。寝顔も可愛いの。死角なしだね。」
意図せず見れた寝顔に、仕事の疲れが吹っ飛ぶどころの騒ぎではなかった。静かな空間に、自分の心拍だけが異常な音を刻んでしまっている。怜花は、朝何度か自分の寝顔を見たときに、どんなことを思ったのだろう。今自分が抱えている、可愛くてどうしようもないなんて気持ちではないだろうな、だとしたらなんだ?という、怜花に直接ぶつけるしか回答の得られない問いまで浮かぶ始末だ。
律はゆっくりと立ち上がった。まずは寝室の布団をめくって、怜花を寝かせるスペースを確保してからでないと、スムーズに移動させられない。そう思って一度、寝室に向かってドアを開けっぱなしにしてからまたリビングに戻ってきた。
すやすやと眠る怜花をそっと抱きかかえ、自分の胸にぐっと近づける。
「…はぁー…なにこれほんと、可愛すぎない?すごっ…。」
「ん…。」
怜花の片目が、眩しそうに開く。両目がゆっくりと開いて、ふわふわした焦点がおそらく今、律に合った。
「ん…ん!?あ、あれ!うわごめん!な、なんで律…?お、おかえり!」
はっきりと覚醒したらしい怜花の慌てっぷりがこれまた可愛くて、律はプッと吹き出した。
「ただいま。寝ててよかったのに。とりあえずこのまま運んじゃうからじっとしてて。」
「へっ!?」