夜を繋いで君と行く
* * *
律は怜花のことをベッドの上にそっと降ろす。そしてそのまま降ろした怜花の隣に座った。
「ありがとう。…ごめんね、仕事後で疲れてるのに。あと、先に寝ちゃってごめん。本当は起きて、律のこと待ってようって思ってたんだけど…寝ちゃって。」
「全然?怜花の寝顔見れて、抱っこまでできちゃって、やりたいことどんどん叶ってるし、嬉しいだけだよずっと。」
「寝顔っ…!」
「…可愛いだけだった。可愛いしかなかった。もー…本当に可愛い。はい、可愛い人は早くベッド入って、大人しく俺に抱きしめられてください。」
「わっ…!」
ぐいぐいと押し込まれて、肩まで掛け布団をかけられる。これでは本当に子供みたいだ。律はというと怜花に布団をかけるとすぐに、自分もベッドに潜り込んだ。そして布団の中で緩く腕が引かれたと思ったら、そのまま息苦しくはならない程度に加減された力で抱きしめられた。耳元で律が深呼吸をする音が聞こえる。
「…はぁー…ちゃんといる。しかも今日は怜花が結構ポカポカ。」
「…いるよ、ちゃんと。律の家は不思議で眠くなっちゃう、なんだか。お皿洗いとか、明日のご飯何作ろうかって考えたりとか、そういうのやろうと思ってたのに何もやってなくてごめんね。明日の朝全部やるから。」
「怜花がちゃんと眠れる場所になってるの?」
「うん。…律がいなくても、律の場所だって思うからなのかな。律のこと見送ってちょっと経ったら…うん、そこから意識がないな、私。」
「じゃあ結構眠れたね。…良かった。」
ホッとした表情を浮かべる律を見て悪い気はしないけれど、怜花は少し悔しい気持ちにもなっていた。本当は、こんな寝る間際まで律の手を煩わせるつもりはなかった。
「…良くないよ。本当は、見送ったときみたいに玄関に行って、おかえりって言うつもりだったのに。」
「え?」
「…『行ってらっしゃい』も『おかえり』も、律はあんまり好きじゃないかもしれないけど、…私はちょっとだけ、…そういう普通に憧れる、から…言ってみたかったのに。」
チャンスは何も、今日だけというわけではない。でも、たくさん優しさと安らぎを与えてくれる律に、少しでも早く同じような優しさと安らぎを返したかった。それが何の行動で、どの言葉でできるのかわからないから、色々やってみるしかない。律が最初からずっとやっていたみたいな丁寧な観察を怜花はやっとスタートさせた状況なのだ。すぐに追いつけるとは思っていないが、焦る気持ちは燻っている。
律は怜花のことをベッドの上にそっと降ろす。そしてそのまま降ろした怜花の隣に座った。
「ありがとう。…ごめんね、仕事後で疲れてるのに。あと、先に寝ちゃってごめん。本当は起きて、律のこと待ってようって思ってたんだけど…寝ちゃって。」
「全然?怜花の寝顔見れて、抱っこまでできちゃって、やりたいことどんどん叶ってるし、嬉しいだけだよずっと。」
「寝顔っ…!」
「…可愛いだけだった。可愛いしかなかった。もー…本当に可愛い。はい、可愛い人は早くベッド入って、大人しく俺に抱きしめられてください。」
「わっ…!」
ぐいぐいと押し込まれて、肩まで掛け布団をかけられる。これでは本当に子供みたいだ。律はというと怜花に布団をかけるとすぐに、自分もベッドに潜り込んだ。そして布団の中で緩く腕が引かれたと思ったら、そのまま息苦しくはならない程度に加減された力で抱きしめられた。耳元で律が深呼吸をする音が聞こえる。
「…はぁー…ちゃんといる。しかも今日は怜花が結構ポカポカ。」
「…いるよ、ちゃんと。律の家は不思議で眠くなっちゃう、なんだか。お皿洗いとか、明日のご飯何作ろうかって考えたりとか、そういうのやろうと思ってたのに何もやってなくてごめんね。明日の朝全部やるから。」
「怜花がちゃんと眠れる場所になってるの?」
「うん。…律がいなくても、律の場所だって思うからなのかな。律のこと見送ってちょっと経ったら…うん、そこから意識がないな、私。」
「じゃあ結構眠れたね。…良かった。」
ホッとした表情を浮かべる律を見て悪い気はしないけれど、怜花は少し悔しい気持ちにもなっていた。本当は、こんな寝る間際まで律の手を煩わせるつもりはなかった。
「…良くないよ。本当は、見送ったときみたいに玄関に行って、おかえりって言うつもりだったのに。」
「え?」
「…『行ってらっしゃい』も『おかえり』も、律はあんまり好きじゃないかもしれないけど、…私はちょっとだけ、…そういう普通に憧れる、から…言ってみたかったのに。」
チャンスは何も、今日だけというわけではない。でも、たくさん優しさと安らぎを与えてくれる律に、少しでも早く同じような優しさと安らぎを返したかった。それが何の行動で、どの言葉でできるのかわからないから、色々やってみるしかない。律が最初からずっとやっていたみたいな丁寧な観察を怜花はやっとスタートさせた状況なのだ。すぐに追いつけるとは思っていないが、焦る気持ちは燻っている。