夜を繋いで君と行く
* * *

 到着したのは9月に初めて一緒に映画を観た場所だった。映画館以外にも買い物をすることができる施設は入っていたが、あの日は仕事後ということもあり、映画を観るだけで特に一緒に何かを見て回ることはしていなかった。

「今日は映画を観るってわけじゃないけど、なんとなーくここに来たかったんだよね。もう3ヶ月も前なんだよ、びっくりじゃない?」
「…3ヶ月…。」
「うん。9月はいっぱい会えてたから楽しかったなー。」

 律の手が怜花の手を絡め取った。あの日と違ってただ手が取られただけではなく、指が絡んで強くきゅっと握られる。

「でも今日は、あの日よりも楽しい1日にするんで。車で来たし、いっぱい買っても積んじゃえばいいし色々見ようよ。キッチンにも物増やしたいし。あと何があったら怜花にとって便利?」
「もう充分便利だよ?フライパンも包丁も綺麗だし、いいところのだし。」
「んー…あ!食器!ラーメン系のどんぶりはこの前怜花が買ってきてくれてたじゃん?パスタとかってちょっと深いやつみたいなのが良くない?食器見たくなってきたかも。」

 店舗内にどんな店があるのかわかるマップの前まで来た。律はしげしげと細部まで眺めている。そんな律を、怜花は横目でちらりと見た。

「ん?」
「あ、いやごめん、なんでもないよ。」
「なんか探ってる目してた。なにー?」
「いやあの…デートし慣れてる見た目なのに、意外とマップの前で立ち止まるんだなって…。」

 黒いマスクにブラウンのチェスターコート。コートの隙間から見えるグレージュのタートルネックがよく似合っていた。黒いマスクのせいでいつもよりも小顔に見えるし、服装からもこなれ感が出ている。

「し慣れてないからでしょ、そんなの。そもそもデートなんて去年も怜花としかしてないよ。」
「デート…は、映画のことを言ってる?」
「映画もだけど、ご飯行ったのも家でお泊まり会やったのもデートです。」
「デートなんだ…。」
「ブランクがありすぎて上手くエスコートとかはできないけど、怜花は俺に甘いからエスコートできなくても怒んないし、だからのびのびしてるよ〜」

 再びマップに視線を向け、『ここにはパジャマありそう』『レディースファッション…片っ端から入る?』などと呟いている。そんな律と一緒に怜花もマップを見つめた。

「怜花の好きなお店は入ってる?洋服はこことか決まってるのあれば教えて?」
「よく買うお店はあるかな、ここだよ。」
「じゃあそこは行こう。あと、なんかちょっとしたおやつ食べたくない?一個を分けて食べるみたいなさ。」
「…そういうの、やりたいの?」
「やりたい!こんな可愛い彼女連れて歩いてますよ〜って本当はめちゃくちゃ自慢して歩きたいからね。」
「ぜ、絶対ダメ!」
「しないけどさー。みんなが可愛すぎ!って寄ってきたら困るし。」
「そうじゃなくて、律の知名度の問題だから!」
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