夜を繋いで君と行く
* * *

「…ワンピースだけでこんなに種類あるの…?」
「そうだよ。」
「選び甲斐があるね!」
「…張り切らないで…本当に。」

 目を爛々と輝かせる律が片っ端から買うと言い出したら困る。怜花は気が気ではなかった。

「悩むなぁ…怜花、身長あるからこう…ほら、こんな感じでお腹のところキュって絞ってるやつとか良くない?」
「お腹のところじゃなくて、ウエストって言いますよ。」
「あ、そっか。ふぅん…カシュクールワンピース…って言うんだ?」

 タグを眺め、名前を確かめてからワンピースを引っ張り、怜花に合わせて『うーん』と言い続けている。

「露出があってもね、似合うとは思うんだけどー…俺が嫌だからそれはなしでー…。」

 自分のものではないのに、一生懸命な姿に怜花はふっと微笑む。思えば、里依以外で自分のためにここまで一生懸命に悩んだり考えたりしてくれている人を目にするのは初めてかもしれなかった。

「いいのあった?」
「あ、ううん。ありがたいなぁって思ってたの。」
「え?」
「選ぼうって思ってくれるのも、ああでもないこうでもないって悩んでくれるのも、男の人にしてもらったことないから新鮮で。…いつもより眩しく見える、律のことが。」
「…怜花…。」
「ん?」
「外出中のいちゃいちゃは、手を繋ぐまでしか許可出てないじゃん?」
「…そ、そうだね。それ以上は全部ダメです。」
「じゃあさーあんまり可愛いこと言って俺のなけなしの理性飛ばそうとすんのやめてね?はい、まずはこれを試着してください!」

 律にぐいっと渡された1着を手に押し付けられる。怜花は小さく頷いて試着室に向かった。

「…危な。思わず抱きしめそうになった…。こんなとこでやったら怒られる…。」

 律は他のワンピースに手を伸ばして平常心を取り戻そうとする。今日はやけに過去の彼氏がちらつく発言が出てくる。怜花の中で自分が『彼氏』の位置に進んで、それゆえに過去との比較が生まれているからだとすればそれ自体は嬉しいことのはずなのに、怜花の言葉から読み取れる、怜花が受けていたであろう待遇が律の胸を軋ませた。

(ヒール一つ、気を遣って。…誕生日を祝われなくても普通みたいな顔をして。…大事にされないことに慣れすぎてるんだよ。椎名さんのことも俺のことも気遣って大事にしてくれてんのに。…自分は大事にされなくてもいい、みたいな。そんなはずないじゃん。)
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