夜を繋いで君と行く
 試着室のカーテンが開いた。思っていた通り怜花に似合っていて、思わず律はマスクを下にずらして微笑んだ。

「やっぱり可愛い!それ絶対似合うと思った!」
「…可愛いんだけど、お値段が全然可愛くなかった…。」
「値段?誕生日だから何でもいいよそんなの。はい、次これ着て。」

 律が渡したのはワインレッドのワンピースだった。

「派手じゃない?」
「そう?クリスマスに着てた赤、似合ってたから多分この色は似合う色なんだと思う。さっきのとシルエット違うし、ちょっと着てみてよ。」
「…わかった。」

 少しだけ頬を染めたまま、怜花がワンピースを受け取った。そしてしばらくしてまた試着室のカーテンが開く。

「…やっぱりちょっと派手じゃないかなぁ。」
「え、いいじゃん。さっきのは可愛いって感じだったけどこっちはモデルさんみたいな感じの仕上がりになるね。思ってたよりタイトっていうか。」
「体系崩れたらこれ着れなくなっちゃうかもだよ。」
「んー悩ましいな…確かに外でこれ着てたら変な男釣れちゃいそうだな…でも家でこれ着ててくれたらかっこいいと可愛いの間って感じで、それはそれでいいなって思っちゃってるんだよな今…。」

 まだ片手に2着ほど試着させようとしているワンピースを持つ律を見て、怜花はため息をつく。

「律さ…。」
「うん。」
「この調子だと、試着させたもの全部買うでしょ。」
「そうなりそうだなって今なんとなく思ってた。」
「ダメです!」
「なんで?」
「なんでって、そんなにたくさんあっても着れないし、あとポンポン買うようなお値段でもないから!」
「値段はさておき、量は怜花の懸念点ね。それはわかった。じゃあ2着に絞ります。はい、次はこれです。」
「まだ着るの?」
「徹底的にやるよ。とりあえず今冬服選んでるけど、春は春でこれ着てほしいーってなると思うな。あ、もちろん怜花が着たい服は普通にいつでもなんでも着てくれていいんだけど、たまに俺が着せたい服も着てくれたら嬉しいっていう感じで。」
「…あのさ。」
「はい。」
「…そういうものなの?世の男の人って。」
「そういうものって?」
「その…こういうの着てほしいとか、そういう願望があるのが普通なのかなって…。」
「普通かどうかはわかんない。俺も怜花にだけだからね、これ着てほしいとか選びたいって思ってんの。でも三澄も御堂も空野もやってそうだなーとは思う。なんか、俺の周りだと普通かも。」
「…なるほどね。で、でも、律はほどほどにしてね!」
「え~…うんとは素直に言いたくないなぁ、こればっかりは。」

 律が頷かないでいると、怜花は少しだけ拗ねた表情を浮かべて、試着室のカーテンを閉めた。
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