夜を繋いで君と行く
* * *

「はぁー…買った買った!大満足!」
「そりゃそうでしょうよ…。」

 怜花は車の後部座席を見つめた。そこには怜花のワンピースを2着とお揃いのパジャマが入ったショップの紙袋。そして食器の入った箱。パスタ皿と土鍋、計量カップ、計量スプーンなど、キッチン用品の買い物にも洋服と同じくらいの時間を費やした。何でも買いそうになる律を押しとどめながら、必要最低限の数にするために怜花は奮闘した。

「お揃いの食器、結構いいのが見つかってよかったよね。シンプルでお洒落な感じの。」
「…本当に値段を見ないで買い物するから怖いよ私は…。」
「趣味もなくて、金は貯まる一方だったからさ。怜花とのご飯の時にいい食器で食べれるならそれが一番幸せじゃん?だったら惜しみなく使うでしょ。」
「普段から浪費してるとは思ってないけど…。」
「でしょ?必要なものしか買ってないよ。今日絶対買ったパジャマ着よう。んで、明日は今日買ったワンピース着てね?」
「新しいものはすぐ使いたいタイプなんだ。」
「今日の買い物はすぐ一緒に使えるものばっかりじゃん。だからすぐ開けたい。」

 アクセルが踏まれて、車が進み出す。今日買った食器のことを思うと、ふと家にあるマグカップのことが思い出された。

「あの…さ。」
「うん。」
「ブラウンのマグカップって、いつ買ったの?」
「11月の終わりかなぁ。それこそ、ライブ終わったら4度目のお泊まり会やろうって言おうと思ってたから、そこまでにもうちょっと生活感のある家にしたいなと思って、1回目のお泊まり会やってからちょこちょこ物は増やしてたよ。」
「…そうだったんだ。」
「いきなりどうしたの?なんでマグカップ?」
「あ、いや…今日食器結構買ったなと思って、なんか思い出しちゃって。マグカップがなんかあの日は苦しかったなぁって。」
「え、え!?マグカップが怜花を泣かせたの?」

 律の声に戸惑いが思い切り乗っかっている。それもそのはずだろう。普通の人はマグカップを見て泣かない。1か月以上ぶりに訪れた律の家で怜花が泣きに泣いた日からまだ2週間ほどしか経っていない。怜花の涙腺を刺激するトリガーはたくさんあったが、その中でもマグカップを見た瞬間に涙腺が壊れた気がしたのだから強烈に覚えている。

「…そうだね、マグカップに泣かされたかも。そっかぁ、律は本当にあの空間に私を置くことを普通に考えてたんだね。」
「考えてたよ。どうやったらもっと長く居てくれるかなとか、いつまで待てばもっと近付いてもいいかなとか、そんなことを考えてた。」
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