夜を繋いで君と行く
看病は特権
* * *

「…ごめん。あの、明日行くって予定だったんだけど…げほっ…。」
『風邪?』
「熱はなくてっ…でも咳が…げほっ…うん、ちょっと出てるのと、少し関節が痛いからこの後発熱したら嫌だなと思ってて…。あと、律にうつすわけにはいかないから、明日行けない…です。ごめん。」

 1月も中旬を過ぎた。寒さは厳しくなり、特に油断をしていたわけではなかった。しかし怜花は喉からくる風邪につかまっていた。水曜あたりから喉がイガイガすると思い、はちみつレモンを飲んだり、のど飴を舐めたりしてどうにかならないかと画策していたが、残念ながら悪化の一途を辿りこうなってしまった。律とは正月を一緒に過ごして以来、律が週末も仕事だったため顔を合わせていなかった。そして2週間ぶりに一緒に過ごすはずだった週末を自分の風邪で潰すことになり、怜花の声のトーンは落ちた。

『それはいいけど、…大丈夫なの?』
「ただの風邪だよ。大丈夫。」
『…本当に?顔見たわけじゃないから、本当に大丈夫でそう言ってるのかわかんなくて心配なんだけど。』
「…ごめんね、心配かけちゃって。あと、食べたいもののリクエストも受けてたのに、げほっ…できなくてっ…。」
『そんなのいいよ。まずは怜花の体調が大事じゃん。食べるものはある?何か届ける?ってかちょっとでいいから顔見たいんだけど。』
「…うつしたくないから、長い時間家にあげたりとか、いてもらったりとかは…ごほごほっ…できないんだけど…。」
『怜花の食べたいもの置いて、ちょっと顔見たらすぐ帰るよ。…看病したいけど、それで俺がたとえうつされたわけじゃなくても、あとで風邪ひいたってなったら自分のせいって思っちゃうのが怜花だもんね。』

 自分の思考回路を読まれていて、怜花は電話越しで苦笑した。律の言う通りなのだ。律の仕事は替えがきかない、唯一無二でたった一人にしかできない仕事だ。だからそう簡単に穴を開けさせてはならない。自分の風邪がうつって律の仕事に穴が開くようなことがあったときに、怜花はきっと自分を許せない。

「…そうなの。ごめん。」
『だから折衷案出してる。ちょっと顔見れたら安心できるから、顔だけ見させて。喉痛いならゼリーとかそういうものなら平気?』
「うん。ゼリー嬉しい。あと、チンしたら食べれるうどんとか、麺類がいいな。」
『わかった。朝ご飯はあるの?』
「ごほっ…う、うん。」
『じゃあ他にも欲しい物あったら連絡してね。いっぱい喋るのきついだろうから、LINEでいいよ。』
「わかった。…ありがとう。」
『うん。ちゃんともうベッド入ってるよね?』
「うん。すぐ寝るよ。」
『なら安心。…ゆっくり休んでね。おやすみ。』
「おやすみ。」
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