夜を繋いで君と行く
* * *
11時半を過ぎた頃、怜花の家のインターホンが鳴った。化粧もしてなければ髪も少しぼさぼさで、一度洗面台で顔を見たが酷く顔色が悪かった。朝体温を計ったら微熱で、体感としてはこれ以上上がらない気がするが、キッチンで料理をする気力や体力は微妙なところであった。律が見たら心配度数がただ上がってしまうであろう見た目を晒すことだけが心配だが、怜花はマスクを二重にしてドアを開けた。
「…なんか…せっかくちょっと体重戻ってたのにまた痩せた…?」
「そんなはずは…ごほっ…。」
律が玄関に入り、一歩距離を近付けるたびに怜花は一歩下がる。
「熱は?」
「…微熱…。」
「薬はあるって言ってたから買ってきてないけど、足りる?」
「うん。」
怜花は律の持つ袋を見た。思っていたよりも小さくて、首を傾げる。怜花は二日もつような量のレンジでチンでどうにかなるものを頼んだ。しかし袋に入りきる量はおそらく1日分だ。
「明日も来るからこの量だよ。今日は今日の分だけです。」
「い、いいのに…!ごほっ…げほっ…!」
「喋っちゃだめ。怜花はこれ食べて薬飲んで寝てて。…具合は良くなさそうだけど、顔見れて良かった。死なれちゃ困るからね。」
「風邪くらいで…死なないよ…ごほっ…。」
「喋んないの。また明日くるから。あとさ、一つお願いがあって。」
喋らないようにと言われたため、怜花は頷いて返事をすることにした。
「スマホスタンドとかってある?喋んなくていいからビデオ通話っていうか、怜花の状態が俺から見えるようにしてほしくて。ずっとじゃなくていいから。怜花が起きた時とかご飯食べるときに電話かけてくれない?ちゃんと食べてるかのチェックも兼ねてます。」
「…過保護。」
「…本当は傍にいてつきっきりで看病したいところを我慢しての措置なんで、これはのんでもらいたいなぁ。本当は今頃、2週間分の怜花を吸ってたはずなので。」
「…ごめん、なさい…。」
本当は怜花だって律と過ごしたかった。クリスマスと年末をほぼ律の家で過ごし、それこそ本当に生活を共にしていた。あの優しい空間から一人の家に戻って来た時の寒さといったらなかった。だからこそ、この週末を楽しみにしていたのだ。また温かい場所に帰れる、と。
「ごめんは俺でしょ。俺が普通のサラリーマンだったら、怜花に何も気負わせることなく看病できてたのにね。って、あんまり長居すると冷えちゃうね。はい、じゃあちゃんと食べてね。夕飯の時には電話すること!」
怜花は頷いた。律はくるりと背を向けた。
(…帰っちゃうのが、寂しいなんて。…なんてわがままで自分勝手な、気持ち。)
向けられた背中が悲しくて、温さが遠ざかっていくのが苦しくて、気が付くと怜花の手は律のコートの袖を引いていた。
11時半を過ぎた頃、怜花の家のインターホンが鳴った。化粧もしてなければ髪も少しぼさぼさで、一度洗面台で顔を見たが酷く顔色が悪かった。朝体温を計ったら微熱で、体感としてはこれ以上上がらない気がするが、キッチンで料理をする気力や体力は微妙なところであった。律が見たら心配度数がただ上がってしまうであろう見た目を晒すことだけが心配だが、怜花はマスクを二重にしてドアを開けた。
「…なんか…せっかくちょっと体重戻ってたのにまた痩せた…?」
「そんなはずは…ごほっ…。」
律が玄関に入り、一歩距離を近付けるたびに怜花は一歩下がる。
「熱は?」
「…微熱…。」
「薬はあるって言ってたから買ってきてないけど、足りる?」
「うん。」
怜花は律の持つ袋を見た。思っていたよりも小さくて、首を傾げる。怜花は二日もつような量のレンジでチンでどうにかなるものを頼んだ。しかし袋に入りきる量はおそらく1日分だ。
「明日も来るからこの量だよ。今日は今日の分だけです。」
「い、いいのに…!ごほっ…げほっ…!」
「喋っちゃだめ。怜花はこれ食べて薬飲んで寝てて。…具合は良くなさそうだけど、顔見れて良かった。死なれちゃ困るからね。」
「風邪くらいで…死なないよ…ごほっ…。」
「喋んないの。また明日くるから。あとさ、一つお願いがあって。」
喋らないようにと言われたため、怜花は頷いて返事をすることにした。
「スマホスタンドとかってある?喋んなくていいからビデオ通話っていうか、怜花の状態が俺から見えるようにしてほしくて。ずっとじゃなくていいから。怜花が起きた時とかご飯食べるときに電話かけてくれない?ちゃんと食べてるかのチェックも兼ねてます。」
「…過保護。」
「…本当は傍にいてつきっきりで看病したいところを我慢しての措置なんで、これはのんでもらいたいなぁ。本当は今頃、2週間分の怜花を吸ってたはずなので。」
「…ごめん、なさい…。」
本当は怜花だって律と過ごしたかった。クリスマスと年末をほぼ律の家で過ごし、それこそ本当に生活を共にしていた。あの優しい空間から一人の家に戻って来た時の寒さといったらなかった。だからこそ、この週末を楽しみにしていたのだ。また温かい場所に帰れる、と。
「ごめんは俺でしょ。俺が普通のサラリーマンだったら、怜花に何も気負わせることなく看病できてたのにね。って、あんまり長居すると冷えちゃうね。はい、じゃあちゃんと食べてね。夕飯の時には電話すること!」
怜花は頷いた。律はくるりと背を向けた。
(…帰っちゃうのが、寂しいなんて。…なんてわがままで自分勝手な、気持ち。)
向けられた背中が悲しくて、温さが遠ざかっていくのが苦しくて、気が付くと怜花の手は律のコートの袖を引いていた。