夜を繋いで君と行く
「洋画なんだけど、今回は吹き替えで観たくて。公開したばっかだからまだ上映回数結構あるし、1か月以内くらいで金曜が空いてるところ、ある?」
「金曜に予定なんてないですし、どこでも大丈夫ですけど、二階堂さんは大丈夫なんですか?」
「え、何が?」
「女と二人で映画に行くってこともですし、お仕事との兼ね合いとかも。」
「うん。大丈夫だから誘ってるよ。どこでもいいんだ。ん-じゃあ来週の金曜日でもいい?」
「…あの、聞いてもいいですか?」
「うん。何?」

 二階堂の反応は早い。ポンポンと返してくれるから、怜花の方もついポンポンと返してしまっている。

「この、帰り一緒にご飯みたいなのは、週何回で想定してますか?」
「3日くらいかな。」
「…えっと、それとは別でデートって言ってます?」
「あーそうだね、来週はそうかも。週4って結構会えるね。」
「会えるね、じゃなくて。あのですね、仕事後直帰して休まなくていいんですか?」
「休んでる休んでる。ちゃんと寝てるし、食べてるし。で、さっきも言ったけど、怜花ちゃんと話すの楽しいんだって俺。なんでかって言えば、確証めいたものはないんだけど多分ね、…似てるんだろうね。感覚とか、配慮しちゃうところとか。」

 怜花にも思い当る節があって、黙ってしまう。こんなにポンポンと会話が進むということは多分そういうことなのだろう。それこそ今のところは友達のように気軽に話せてしまう。異性なのに。
 二階堂の存在は怜花の日常を非日常に変えるはずなのに、あまりにもスッと、何の違和感もなく日常の中に溶け込んでしまっている。だからこそ強く拒否もできないし、しようと思う気持ちすら生まれない。

「…仕事に支障を絶対に出さないでください。」
「出すわけないよ。彼氏彼女のせいで仕事できなくなるなら、その相手は重荷でしかないでしょ。」
「…わかりました。来週の金曜の夜、映画ですね。」
「時間とかは近くなったら相談で。チケットは俺、用意します。」
「じゃあ担々麺は私払います。」
「え、大盛食べちゃったよ、俺。」
「だとしても映画より安いですし、このままだと映画も担々麺も奢られてしまう気配をひしひしと感じました。」

 怜花が言い切ると二階堂は苦笑した。
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