夜を繋いで君と行く
* * *
「お待たせしました!」
「走ってきたの、あの俊足で?」
「いえ、あの日ほど全力疾走はしてません。」
「あれはいい走りっぷりだったよね~完敗だった。」
バーベキューの日、咄嗟に逃げたのは完全に防衛本能だった。あれ以上、あの場で踏み込まれてはいけない。隙を見せすぎだという自分への戒めもあったから、全力で安全地帯である里依のところまで走ったのだ。しかし、今はそこまでの防衛本能も二階堂相手に働かないし、今日の走りは軽いランニング程度のものだった。
「まぁいいんですよ、あの日のことは。それで、今日の手土産はこちらです。」
「…何?」
「…手土産と言っていいのかはあの…なんか、微妙なんですけど、送っていただいたついでに渡せるものでそれなりに役に立つものって考えたら…残らないものの方がと思いまして。」
「開けていいの?なんだろ、これ。」
保冷バッグなんて、もしかしたら知らないのかもしれない。チャックを開けて入っているものを覗き込んだ二階堂は、どうやら覗き込んだだけでは中身が何なのかわからなかったようだ。
「ん…これ、え、何…手作り?あ、キッシュ!」
「もし苦手なものがあったら遠慮なく置いて行ってください。キッシュはすぐ食べちゃった方がいいですけど、一応全部昨日作ったのでギリギリ土日はもつかな…とにかく早めに食べてください。」
「え、これ何?あ、ひじきか!うわぁ、めっちゃご飯のおかずって感じじゃん。」
二階堂の顔がぱあっと明るくなって、怜花はほっと胸を撫でおろした。いきなり手料理なんて重いし気持ち悪いと思われるかと思ったが、二階堂の表情にそれは杞憂だったことがわかる。
「え、これなんだろう。なす?ピーマンも見える。なにこれ。」
「なすとピーマンの肉みそ炒めです。ご飯があればそれをおかずにして1食分って感じの量にしましたけど…足りないとか多過ぎるとかはあれば言ってください。」
「なんで?」
「はい?」
「なんで、こんなに?」
とてもまっすぐな目で、二階堂は二回、『なんで』を繰り返した。
「お待たせしました!」
「走ってきたの、あの俊足で?」
「いえ、あの日ほど全力疾走はしてません。」
「あれはいい走りっぷりだったよね~完敗だった。」
バーベキューの日、咄嗟に逃げたのは完全に防衛本能だった。あれ以上、あの場で踏み込まれてはいけない。隙を見せすぎだという自分への戒めもあったから、全力で安全地帯である里依のところまで走ったのだ。しかし、今はそこまでの防衛本能も二階堂相手に働かないし、今日の走りは軽いランニング程度のものだった。
「まぁいいんですよ、あの日のことは。それで、今日の手土産はこちらです。」
「…何?」
「…手土産と言っていいのかはあの…なんか、微妙なんですけど、送っていただいたついでに渡せるものでそれなりに役に立つものって考えたら…残らないものの方がと思いまして。」
「開けていいの?なんだろ、これ。」
保冷バッグなんて、もしかしたら知らないのかもしれない。チャックを開けて入っているものを覗き込んだ二階堂は、どうやら覗き込んだだけでは中身が何なのかわからなかったようだ。
「ん…これ、え、何…手作り?あ、キッシュ!」
「もし苦手なものがあったら遠慮なく置いて行ってください。キッシュはすぐ食べちゃった方がいいですけど、一応全部昨日作ったのでギリギリ土日はもつかな…とにかく早めに食べてください。」
「え、これ何?あ、ひじきか!うわぁ、めっちゃご飯のおかずって感じじゃん。」
二階堂の顔がぱあっと明るくなって、怜花はほっと胸を撫でおろした。いきなり手料理なんて重いし気持ち悪いと思われるかと思ったが、二階堂の表情にそれは杞憂だったことがわかる。
「え、これなんだろう。なす?ピーマンも見える。なにこれ。」
「なすとピーマンの肉みそ炒めです。ご飯があればそれをおかずにして1食分って感じの量にしましたけど…足りないとか多過ぎるとかはあれば言ってください。」
「なんで?」
「はい?」
「なんで、こんなに?」
とてもまっすぐな目で、二階堂は二回、『なんで』を繰り返した。