夜を繋いで君と行く
いつもより長く
* * *

 先週とは違い、今週は二階堂の仕事が立て込んでいて顔を合わせたのは1回だった。今日は木曜で、ハンバーグやステーキが美味しいと評判のお店に来ていた。

「今週あんまり送れなくてごめんね。」
「あ、いえいえ。むしろこのくらいのペースでいいというか、先週がおかしかったので大丈夫です。」
「そう?まぁでもちょこちょこ電話はしてたか。」
「…あの。」
「ん?」
「マメな性格ですよね、意外と。いいんですよ、もっと適当で。」
「マメだったら自炊してるでしょ~。俺はただ、ちょっと話したかったんだって。」

 表情がつくと感情がわかりやすくなって、怜花は少しだけほっとした。電話の声はやはりいつもよりもずっと静かなのだ。こうやって会って話すとそれがやはり勘違いなどではなく、感じたままで正解だったことがわかる。

「あ、そうだ。今日は聞こうと思ってたことがありまして。」
「うん。何?」
「二階堂さんって三澄さんとお仕事、一緒になりますか?」
「ん-…たまに。なんで?」

 デミグラスソースがたっぷりと乗ったハンバーグをがぶりといって、もぐもぐと頬張る二階堂は怜花に視線を向けたままだ。怜花は自分の和風おろしハンバーグの付け合わせのポテトを2本食べてから、言葉を続けた。

「三澄さんって惚気とか、言うのかなとふと疑問に思ったもので。」
「ん-…そうだなぁ。休憩時間にスタジオの外でだらしない顔してスマホ握ってるときはまぁ、相手が誰かわかるなって感じ。でも別に彼女できたって言いまくってるわけではないと思うよ。三澄のこと狙ってたらしい声優は、まぁちょっとしょげてたかな。女の勘?とかでわかったのかもね。」
「そうなんですね。…やっぱり、里依の目に狂いはないなぁ…。」

 ふとこぼれ落ちた本音。先日里依と久しぶりに夜、近況報告通話をした。仲がいいといっても、二人とももう学生じゃない。それに里依には彼氏もできた。それもあって、里依の方から誘われない限りは極力誘わないようにしていたが、そんな里依から相談したいことがあると言われて始まった通話だった。三澄と順調に過ごせていること、泊まりに来るかと問われたこと、嬉しくて行くと返事をしたけれど、恋人同士の泊まりはつまりはそういうこともある、と考えたら固まってしまったらしい。三澄本人には相談できなくて怜花にしか話せないということだったようだ。
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