夜を繋いで君と行く
「椎名さんと会ったの?」
「ああいえ、この前電話して、近況を聞いたり今度出かける約束をしたりして。…三澄さんは里依のこと、ちゃんと大事にしてくれてるんだなってのがわかって、里依はいつも正しくて正解だなって。」
「…なるほど。俺にとっての三澄みたいなもんだね。」
「そうなんですか?」

 二階堂は少し大きめに一口分を切ったせいで、首を縦に振ることだけで返事をした。

「…人当たりがよくて優しくて、もちろん押すこともできるけど待つこともできる。椎名さんに安心を提供できる存在でしょ?」
「…そうですね。里依の優しさを当たり前だと思っているような雰囲気もなさそうでしたしね。」
「うん。向けられる優しさが当たり前なわけ、ないからね。」
「…ですね。」

 優しくしたいのは、相手のことが大切だからだ。しかし、世の中には人の善意や優しさを搾取するだけの存在のなんと多いことか。搾取し、無駄に消費するだけの人に里依が引っかからなくてよかった。優しい人は、優しくない人に食われるべきではない。

「それで、惚気は聞けたの?」
「まぁそれなりには?」
「そっか。まぁ心配はしてなかったけど、うまくいってんのはいいね、なんか。」
「はい。私とも今度お泊まり会しようかって話になって。」

 二階堂がナイフとフォークを置いた。近くにあったグラスに手を伸ばし、ごくりと飲んで、片肘をついた。食事中のマナーとしては微妙なところだが、二階堂が何かじっくり物事を考えるときにするポーズの一つなのだろうと思って、怜花も見つめ返す。

「…何か変なことを言いました?」
「私とも、ってことはその前に三澄とお泊まり会ってやつをやるってことだよね?」
「まぁ、そうですね。」
「ふーん、なるほど。じゃあさ、怜花ちゃんもうちでお泊まり会、する?」
「ん…えっ!?」

(じゃあの流れが変でしょどう考えても!)
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