夜を繋いで君と行く
「あ、警戒レベル上がったね。もちろん手なんて出さないし、許可なく触らないし、距離も取れって言うなら取る。ただ、今までより長く時間を一緒に過ごしてみたいだけ。」
それだけ言うと、二階堂は再びナイフとフォークを手に持ち、今度は一口が大きくなりすぎないように切った。
「あの…。」
「何?」
「そんなこと言っていいんですか?」
「何が?」
「許可なく触らないとか、距離を取るとか。」
「そっち?てっきり泊まりとか何考えてんですかって一撃目来るかと思ってたのに。」
「そっちもありますけど!でも…。」
怜花は少しだけ俯いた。二階堂はきっと、今まで怜花が出会ってきた男とは違う人だという予感はある。しかし、今まで自分を守るためにしてきたことを、その予感という不確かなものを理由に曲げていいのかがわからない。それにおそらく、二階堂にはそういう自分の気持ちも見えているのだろう。だからこそ、手は出さない、触らないということまで言ってくれている。
「うん。他に懸念事項あったら教えて?」
「…懸念事項っていうか、もし破りたくなったらどうするのかなって。」
「…破りたくならないよ。」
二階堂は口元を少しだけ緩めて微笑んだ。
「…そんな怖がんないで。あのさ、俺は嫌われたくないの、怜花ちゃんに。急に好かれたいとも思ってないけど、少なくとも嫌われたくはない。だから、そんな一発KOみたいな嫌われることして終わらせたくない。邪魔ならその日だけ、彼氏じゃなくなってもいいよ。ちょっと顔見知りの喋ると面白い人と、いつもより長く過ごしてほしいってだけ。」
(…いつも、一枚上手をいかれてしまう感じがするのよね…何なんだろうこのお見通し感。)
怜花が抱える不信感や不安がまるで全て見えているかのような言葉に、怜花はいつも退路を塞がれてしまうのだ。二階堂は男として、そして仮とはいえ『彼氏』として要求していいとされていることを放棄しようとしている。普通の男が怜花に求めることを、何一つしないと言っている。二階堂に対して疑う気持ちがある、というわけではなかった。たった2週間とはいえ、二階堂は怜花に何一つ嘘はついていないし、怜花が訊いたことを濁してもいない。わからないことはわからないとはっきり言うし、なぜかと問われたことも数多くある。その素朴な視線と在り方は心地よかった。それもまた、嘘ではなかった。
それだけ言うと、二階堂は再びナイフとフォークを手に持ち、今度は一口が大きくなりすぎないように切った。
「あの…。」
「何?」
「そんなこと言っていいんですか?」
「何が?」
「許可なく触らないとか、距離を取るとか。」
「そっち?てっきり泊まりとか何考えてんですかって一撃目来るかと思ってたのに。」
「そっちもありますけど!でも…。」
怜花は少しだけ俯いた。二階堂はきっと、今まで怜花が出会ってきた男とは違う人だという予感はある。しかし、今まで自分を守るためにしてきたことを、その予感という不確かなものを理由に曲げていいのかがわからない。それにおそらく、二階堂にはそういう自分の気持ちも見えているのだろう。だからこそ、手は出さない、触らないということまで言ってくれている。
「うん。他に懸念事項あったら教えて?」
「…懸念事項っていうか、もし破りたくなったらどうするのかなって。」
「…破りたくならないよ。」
二階堂は口元を少しだけ緩めて微笑んだ。
「…そんな怖がんないで。あのさ、俺は嫌われたくないの、怜花ちゃんに。急に好かれたいとも思ってないけど、少なくとも嫌われたくはない。だから、そんな一発KOみたいな嫌われることして終わらせたくない。邪魔ならその日だけ、彼氏じゃなくなってもいいよ。ちょっと顔見知りの喋ると面白い人と、いつもより長く過ごしてほしいってだけ。」
(…いつも、一枚上手をいかれてしまう感じがするのよね…何なんだろうこのお見通し感。)
怜花が抱える不信感や不安がまるで全て見えているかのような言葉に、怜花はいつも退路を塞がれてしまうのだ。二階堂は男として、そして仮とはいえ『彼氏』として要求していいとされていることを放棄しようとしている。普通の男が怜花に求めることを、何一つしないと言っている。二階堂に対して疑う気持ちがある、というわけではなかった。たった2週間とはいえ、二階堂は怜花に何一つ嘘はついていないし、怜花が訊いたことを濁してもいない。わからないことはわからないとはっきり言うし、なぜかと問われたことも数多くある。その素朴な視線と在り方は心地よかった。それもまた、嘘ではなかった。