夜を繋いで君と行く
* * *
「今時の炊飯器やばすぎた!今2個で悩んでる!」
「…あの、この時間帯のテンションじゃないんで、もう少し静かに。」
怜花の手を握ったまま、その手はいつもよりも大きく振られている。遠足の日に張り切って歩く子供のように、ブンブンと音が鳴るんじゃないかというくらいには。炊飯器は決め切れず、フライパンは目星をつけてきた。怜花が泊まりに行く日までには、二階堂が持ち帰れそうなタイミングで買うことにするらしい。
「車で行けば全部持ち帰れるし、車出勤の日の帰りに買って帰ろっと。」
「車…?えっ、あの、普段は車出勤なんですか?」
「電車で行くときもあるし、色々。なんで?」
「あの、もしかして…わざわざ私を送る日は電車にしてるとかそういうことは…?」
「ん-…まぁあるっちゃあるけど、でも車で行かなきゃいけないときは車で行ってるし、そういう時は送れないかなって。」
「いや、どう考えても車でぱっと私のこと拾って落として即帰宅の方がいいじゃないですか!時間のロスが少なくて!」
電車を待ったり、駅から歩いたり、そういう時間を減らせるアイテム、車を所持している可能性がここまで1ミリも浮かんでいなかったのは、二階堂が車を持っている素振りを全く見せなかったというのもある。怜花が車と疎遠な生活をしているからでもあるが。どう考えても電車に乗って送ることの二階堂側のメリットが浮かばず、怜花も少し大きな声が出た。
「男の車乗るの、怖くない?俺は普通に送り届けるけど、嫌かなーと思って。」
「…そういう、理由でしたか…。」
(…どこまでも先を読まれている。先を読まれているというか、思考回路を読まれている感じかもしれない。)
「あとね、結構楽しんでるんだよね、俺。…変化を、楽しんでる。」
「変化…ですか?」
「うん。たとえばさ、あんまり俺、手を繋ぐとかもしてこなかったわけ。自分のペースで歩きたくて。だけどなんか今は別に、相手がちゃんとついてこれるペースかなとか、そう言うのを考えるのが煩わしくはないっていうか。お、握り返してくれんだとか、そういうのがちょっと嬉しかったりとか。」
ふふーんと妙な声を出して、二階堂がニヤっと笑った。
「今時の炊飯器やばすぎた!今2個で悩んでる!」
「…あの、この時間帯のテンションじゃないんで、もう少し静かに。」
怜花の手を握ったまま、その手はいつもよりも大きく振られている。遠足の日に張り切って歩く子供のように、ブンブンと音が鳴るんじゃないかというくらいには。炊飯器は決め切れず、フライパンは目星をつけてきた。怜花が泊まりに行く日までには、二階堂が持ち帰れそうなタイミングで買うことにするらしい。
「車で行けば全部持ち帰れるし、車出勤の日の帰りに買って帰ろっと。」
「車…?えっ、あの、普段は車出勤なんですか?」
「電車で行くときもあるし、色々。なんで?」
「あの、もしかして…わざわざ私を送る日は電車にしてるとかそういうことは…?」
「ん-…まぁあるっちゃあるけど、でも車で行かなきゃいけないときは車で行ってるし、そういう時は送れないかなって。」
「いや、どう考えても車でぱっと私のこと拾って落として即帰宅の方がいいじゃないですか!時間のロスが少なくて!」
電車を待ったり、駅から歩いたり、そういう時間を減らせるアイテム、車を所持している可能性がここまで1ミリも浮かんでいなかったのは、二階堂が車を持っている素振りを全く見せなかったというのもある。怜花が車と疎遠な生活をしているからでもあるが。どう考えても電車に乗って送ることの二階堂側のメリットが浮かばず、怜花も少し大きな声が出た。
「男の車乗るの、怖くない?俺は普通に送り届けるけど、嫌かなーと思って。」
「…そういう、理由でしたか…。」
(…どこまでも先を読まれている。先を読まれているというか、思考回路を読まれている感じかもしれない。)
「あとね、結構楽しんでるんだよね、俺。…変化を、楽しんでる。」
「変化…ですか?」
「うん。たとえばさ、あんまり俺、手を繋ぐとかもしてこなかったわけ。自分のペースで歩きたくて。だけどなんか今は別に、相手がちゃんとついてこれるペースかなとか、そう言うのを考えるのが煩わしくはないっていうか。お、握り返してくれんだとか、そういうのがちょっと嬉しかったりとか。」
ふふーんと妙な声を出して、二階堂がニヤっと笑った。