夜を繋いで君と行く
* * *
「…予想はしていました。広いかなって。」
「セキュリティ面でも心配はない?」
「はい。これなら撮られない気がします。」
二階堂のマンションの部屋の前まで来た。逃げる気などないけれど、この先は本当にもっと『逃げられない』場所だ。不安と緊張と、少しだけの期待が混じった変な気持ちだった。二階堂とであれば、ただの友達みたいに普通に楽しく過ごせるのではないかとか、自分の作ったものを食べるときの顔を初めて見れるんじゃないかとか、そういう期待は少しある。しかし、それを覆い隠すくらいのざわつきもあるから手は冷たいままだった。
「はい、どうぞ。何もない家だけど。」
「ありがとうございます。」
二階堂がドアを開けてくれて、怜花は一歩を踏み出した。
「お邪魔します。」
言葉通り、玄関には靴が一足あるだけで、何かが飾られているわけでもなんでもなかった。そのまま奥へ進むと大きなネイビーのソファーがある。リビングにあるものはそのソファーとテレビ、テレビ台の下にはおそらくブルーレイデッキ。ソファー前に座卓がある。しかしソファーよりもはるかに小さいそれに、アンバランスさを感じる。このテーブルの上で何かをしているようには思えないのだ。
「…あの、本当にここに住んでるんですか?」
「え、何?どういうこと?」
「生活感がなさすぎます!なんですかこれ!モデルルームみたい!」
「あ、そういうこと?んー…まぁ、家にいてもソファで横になって台本読んだり、映像作品チェックしたりとか、そんなものだからなぁ。」
「…ですよね。あの、さっそく調理にかかってもいいですか?キッチン確認しても平気です?」
「うん。あ、怜花ちゃんの荷物も好きなとこ置いていいよ。ていうか着替える?」
「着替える?」
「あ、俺家に帰ってきたらスウェットとか適当なのに着替えるからさ。怜花ちゃんが着替えるなら俺、あっち行ってる~。」
「き、着替えないです!私はカレーを作ります。」
「わかった。じゃあ先やってて。」
二階堂は別の部屋に行ってしまった。怜花は自分の持ってきたカバンからエプロンを取り出し、頭から被った。エプロンなんて普段はしないが、服に何かが飛んでしまっても困ると思って持ってきたものだった。キッチンは広く、そして綺麗だった。シミ一つなく、越してきたばかりなのかと思うくらいにはピカピカだ。
「…予想はしていました。広いかなって。」
「セキュリティ面でも心配はない?」
「はい。これなら撮られない気がします。」
二階堂のマンションの部屋の前まで来た。逃げる気などないけれど、この先は本当にもっと『逃げられない』場所だ。不安と緊張と、少しだけの期待が混じった変な気持ちだった。二階堂とであれば、ただの友達みたいに普通に楽しく過ごせるのではないかとか、自分の作ったものを食べるときの顔を初めて見れるんじゃないかとか、そういう期待は少しある。しかし、それを覆い隠すくらいのざわつきもあるから手は冷たいままだった。
「はい、どうぞ。何もない家だけど。」
「ありがとうございます。」
二階堂がドアを開けてくれて、怜花は一歩を踏み出した。
「お邪魔します。」
言葉通り、玄関には靴が一足あるだけで、何かが飾られているわけでもなんでもなかった。そのまま奥へ進むと大きなネイビーのソファーがある。リビングにあるものはそのソファーとテレビ、テレビ台の下にはおそらくブルーレイデッキ。ソファー前に座卓がある。しかしソファーよりもはるかに小さいそれに、アンバランスさを感じる。このテーブルの上で何かをしているようには思えないのだ。
「…あの、本当にここに住んでるんですか?」
「え、何?どういうこと?」
「生活感がなさすぎます!なんですかこれ!モデルルームみたい!」
「あ、そういうこと?んー…まぁ、家にいてもソファで横になって台本読んだり、映像作品チェックしたりとか、そんなものだからなぁ。」
「…ですよね。あの、さっそく調理にかかってもいいですか?キッチン確認しても平気です?」
「うん。あ、怜花ちゃんの荷物も好きなとこ置いていいよ。ていうか着替える?」
「着替える?」
「あ、俺家に帰ってきたらスウェットとか適当なのに着替えるからさ。怜花ちゃんが着替えるなら俺、あっち行ってる~。」
「き、着替えないです!私はカレーを作ります。」
「わかった。じゃあ先やってて。」
二階堂は別の部屋に行ってしまった。怜花は自分の持ってきたカバンからエプロンを取り出し、頭から被った。エプロンなんて普段はしないが、服に何かが飛んでしまっても困ると思って持ってきたものだった。キッチンは広く、そして綺麗だった。シミ一つなく、越してきたばかりなのかと思うくらいにはピカピカだ。