夜を繋いで君と行く
「怜花ちゃん。」
「何ですか?」
「俺も何かしたいんだけど、隣にいたら緊張する?」
米を研ごうと思って流しに立った怜花は声のする方を振り返った。さっきまで余裕そうに見えて、怜花のことを思いっきりからかってきた人の声が、不安げに揺れているように聞こえた。不思議なものでやることが明確になった今、少し緊張は薄れていて、ふっと軽く、怜花の口元が緩んだ。
「しないです、今は。じゃあお米研いでください。私は野菜を洗うので。逆でもいいですけど。」
「…うん。じゃあ米担当します。」
二人並んでもくっつく必要のないくらいに広い流しがありがたかった。怜花の家だったらこうはならなかっただろう。二階堂の手つきは慣れたものではなかったが、一生懸命さの伝わるものだった。小学生の調理実習だったらこんな感じだったかもしれないなんて想像して、怜花は野菜を洗いつつ自然に微笑んでしまうのを止められなかった。
「先生!こんな感じで大丈夫ですか?」
「…先生ではないですけど、まぁはい。大丈夫です。丁寧でした。」
「米のふっくら具合、変えられるんだけど好みある?」
「ふっくら具合!?」
「うん。楽しそうだなって思って色々やってるよ。怜花ちゃんの好みあればそれでやろうよ。」
「好み…ちなみにどういうモードがあるんですか?」
「しゃっきり、もちもち、ふっくら。」
「そんな抽象的な…。でもそうだな…もちもちがいいです。」
「もちもちね。オッケー。」
ボタンを押す手だけは手慣れた様子の二階堂が面白かった。怜花は野菜を洗い終わり、キッチンをきょろきょろする。そしてふと、気付く。これがないと、野菜の処理ができないと。
「あの…包丁はどうなってますか?」
「あるよ!よくわからなかったから3本くらい用意したはず!」
流しの下を開けると、新品の包丁が見つかる。鍋同様ティファールで、鍋は一緒に見たからこれだろうと見当はついていたが、ふと包丁と思い当たってどれを選べばいいかわからずに同じメーカーなら間違いがないと考えたのかもしれない。今日の日のための二階堂の大変さや準備、かけた費用がどんどん膨れているように思えて、自分はそれに見合うものを返すために一体何品作ったらいいのだろうと考えると、何品作っても足りない気がした。
「何ですか?」
「俺も何かしたいんだけど、隣にいたら緊張する?」
米を研ごうと思って流しに立った怜花は声のする方を振り返った。さっきまで余裕そうに見えて、怜花のことを思いっきりからかってきた人の声が、不安げに揺れているように聞こえた。不思議なものでやることが明確になった今、少し緊張は薄れていて、ふっと軽く、怜花の口元が緩んだ。
「しないです、今は。じゃあお米研いでください。私は野菜を洗うので。逆でもいいですけど。」
「…うん。じゃあ米担当します。」
二人並んでもくっつく必要のないくらいに広い流しがありがたかった。怜花の家だったらこうはならなかっただろう。二階堂の手つきは慣れたものではなかったが、一生懸命さの伝わるものだった。小学生の調理実習だったらこんな感じだったかもしれないなんて想像して、怜花は野菜を洗いつつ自然に微笑んでしまうのを止められなかった。
「先生!こんな感じで大丈夫ですか?」
「…先生ではないですけど、まぁはい。大丈夫です。丁寧でした。」
「米のふっくら具合、変えられるんだけど好みある?」
「ふっくら具合!?」
「うん。楽しそうだなって思って色々やってるよ。怜花ちゃんの好みあればそれでやろうよ。」
「好み…ちなみにどういうモードがあるんですか?」
「しゃっきり、もちもち、ふっくら。」
「そんな抽象的な…。でもそうだな…もちもちがいいです。」
「もちもちね。オッケー。」
ボタンを押す手だけは手慣れた様子の二階堂が面白かった。怜花は野菜を洗い終わり、キッチンをきょろきょろする。そしてふと、気付く。これがないと、野菜の処理ができないと。
「あの…包丁はどうなってますか?」
「あるよ!よくわからなかったから3本くらい用意したはず!」
流しの下を開けると、新品の包丁が見つかる。鍋同様ティファールで、鍋は一緒に見たからこれだろうと見当はついていたが、ふと包丁と思い当たってどれを選べばいいかわからずに同じメーカーなら間違いがないと考えたのかもしれない。今日の日のための二階堂の大変さや準備、かけた費用がどんどん膨れているように思えて、自分はそれに見合うものを返すために一体何品作ったらいいのだろうと考えると、何品作っても足りない気がした。