夜を繋いで君と行く
「いいですよ。今何が残ってるんでしたっけ?」
「ん-と、麦茶とコーラとジンジャーエールと…。」

 二階堂の横に立って、クーラーボックスの中を覗き込む。意外となくなっていて結構買わなくてはならないなと覚悟する。

「俺らが持ってきたやつはまだあるから、二階堂たちのやつ補充って感じでよろしく。」
「わかりました。」
「三澄と椎名さんは?何か飲みたいものある?三澄はだめだけど、椎名さんはアルコールでもいいよー。」
「俺炭酸がいいー。」
「里依は?」
「私、まだ残ってるから大丈夫だよ。」
「わかった。まぁ里依が好きそうなのわかるし、適当に追加しておくね。」
「ありがとう。」

 空野たちのクーラーボックスに残っていた飲み物を移して、空になったクーラーボックスを片手に二階堂が歩き出す。その後ろに怜花も遅れないようについていく。

「ここのバーベキュー場、近くにありましたよね、買い出しできるところ。食材とかも何か欲しい物あれば里依を通じて連絡してください。」
「はーい!怜花ちゃんってしっかり者だねー!」

 亜実の言葉に怜花はぺこっと小さく頭を下げる。怜花のことを数歩先で待っていた二階堂の横に並んで歩き出した。

(…気まずい、というわけではないけど、前にちゃんと喋ったのって半年以上前…かも。)

 二階堂と三澄が出ていた声優ライブに参加した里依と怜花の話を、同じ居酒屋で聞かれていたということが判明し、その後その居酒屋で再会して話したのが最初で最後だ。あの時は酒が入っていたというのもあるし、何より里依の憧れの三澄に、里依が会えたということが嬉しくて、その場を盛り上げるために二階堂と話を上手く合わせていたような気がする。それ以降会ってはないし、二階堂と一対一で話したことも、当然ながらない。

「付き合ってくれてありがとね。でも怜花ちゃんが来るとは思ってなかったな~。」

 軽いトーンの声が降ってきて、怜花は思わず顔を上げた。
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