夜を繋いで君と行く
「…怖くは、ないんですけど…。」
「怖くはないか、それはよかった。でも、怜花ちゃんは美人だから、そういう変な男もたくさん寄ってきてただろうし、今までの経験から防衛本能働いてもおかしくないなとは思うし。俺も似たようなって言っていいかはわかんないけど、危ねーみたいな目に遭いそうになったことはあるから。」
「え、そうなんですか?」
怜花が食い入るように見つめると、二階堂は苦笑した。
「うん。俺と付き合いたい子が酔わせようとしてきたり、2人きりになってホテル行こうとかあったし。こっちは全然、そんな気はないし、そういう人に疲れ切ってて辟易してんのにね。だから、男と女で少しズレるかもしれないけど、自分の認識と違いすぎて怖いみたいなことはわかるから。嫌なことはしたくないし、嫌われたいわけじゃない。…ただ、まだ知りたいんだよね、もう少し。怜花ちゃんが何考えて、何を見つめてんのか、知りたいの。」
モテる、ということはそれ自体を快楽だと思える思考があれば幸せなのかもしれない。ただ、そういう好奇の視線も、底に見え隠れする欲望も、不要なひとにとってはただの重荷でしかなく、迷惑だった。似たような気持ちを二階堂も抱えていたことがあることを初めて知り、また一つ、二人の間に重なりが増える。
「…二階堂さんは、それでいいんですか?」
「俺がそれでいいっていうより、怜花ちゃんが嫌じゃないかが重要だよ。俺は寝る間際まで話してくれるならその方がいいけど、俺に手を出されるんじゃないかって気持ちが強くて不安が勝つとか、無理しないとできないみたいなくらいなら全然…。」
「…あの、本当に…。」
「うん。」
「同じベッドでごろごろするだけで、いいんですか?」
まっすぐ目を見ては言えなかった。間違って泣いてしまってはいけない。そんな気持ちが先走って、俯いたまま言葉を吐いた。
「うん。それで本当に眠くなっちゃったらそのまま寝ちゃおうよ。目が冴えちゃったってなったら、夜更かししよ。映画観てもいいし。」
「…そんな普通なことを、したいんですか?」
「うん。普通なことを、怜花ちゃんとしたらどうなるのか、試しているところだから。」
どこか実態のない寂しさみたいな気持ちを連れてくるのがいつもの夜なのに、今は違う。声色が変わったわけでも、二人の関係が変わったわけでも何でもない。しかし自分の中に隠していた鉛をそっと包むような声に導かれて、怜花はゆっくりと顔を上げた。
「怖くはないか、それはよかった。でも、怜花ちゃんは美人だから、そういう変な男もたくさん寄ってきてただろうし、今までの経験から防衛本能働いてもおかしくないなとは思うし。俺も似たようなって言っていいかはわかんないけど、危ねーみたいな目に遭いそうになったことはあるから。」
「え、そうなんですか?」
怜花が食い入るように見つめると、二階堂は苦笑した。
「うん。俺と付き合いたい子が酔わせようとしてきたり、2人きりになってホテル行こうとかあったし。こっちは全然、そんな気はないし、そういう人に疲れ切ってて辟易してんのにね。だから、男と女で少しズレるかもしれないけど、自分の認識と違いすぎて怖いみたいなことはわかるから。嫌なことはしたくないし、嫌われたいわけじゃない。…ただ、まだ知りたいんだよね、もう少し。怜花ちゃんが何考えて、何を見つめてんのか、知りたいの。」
モテる、ということはそれ自体を快楽だと思える思考があれば幸せなのかもしれない。ただ、そういう好奇の視線も、底に見え隠れする欲望も、不要なひとにとってはただの重荷でしかなく、迷惑だった。似たような気持ちを二階堂も抱えていたことがあることを初めて知り、また一つ、二人の間に重なりが増える。
「…二階堂さんは、それでいいんですか?」
「俺がそれでいいっていうより、怜花ちゃんが嫌じゃないかが重要だよ。俺は寝る間際まで話してくれるならその方がいいけど、俺に手を出されるんじゃないかって気持ちが強くて不安が勝つとか、無理しないとできないみたいなくらいなら全然…。」
「…あの、本当に…。」
「うん。」
「同じベッドでごろごろするだけで、いいんですか?」
まっすぐ目を見ては言えなかった。間違って泣いてしまってはいけない。そんな気持ちが先走って、俯いたまま言葉を吐いた。
「うん。それで本当に眠くなっちゃったらそのまま寝ちゃおうよ。目が冴えちゃったってなったら、夜更かししよ。映画観てもいいし。」
「…そんな普通なことを、したいんですか?」
「うん。普通なことを、怜花ちゃんとしたらどうなるのか、試しているところだから。」
どこか実態のない寂しさみたいな気持ちを連れてくるのがいつもの夜なのに、今は違う。声色が変わったわけでも、二人の関係が変わったわけでも何でもない。しかし自分の中に隠していた鉛をそっと包むような声に導かれて、怜花はゆっくりと顔を上げた。