夜を繋いで君と行く
(2日間、怪我無く無事に頑張ってくださいって、…言いたかった、かも。)
応援を伝えるための指に、もう勇気はなかった。さっきまで読めていたスマートフォン上の記事が、もう読めない。視界がゆらゆらと揺れる。今なら引き返せる。二階堂の連絡先を消して、今までのやり取りもなかったことにして、一緒に過ごした時間の何もかもを白紙にする。そもそも、最初から全部間違っていた。二階堂が優しかったから、手を差し伸べてくれたから掴んでしまったけれど、それは正しくなかったことのように今は思える。たった3ヶ月のことを忘れるなんて、きっと簡単だ。できる。できなくちゃ困る。
かつて里依に言った「悩んでる分だけその気持ちは本物」という言葉が、今更ながら自分に返ってくる。とんだ皮肉だと自分でも思う。あんなに偉そうに語った自分は、悩んでいる分だけ本物の気持ちに蓋をしようとしているのに。蓋をせずまっすぐに向き合った里依は、今あんなに幸せそうに三澄の隣で笑っていることを知っているのに。
「…里依…私には無理…。」
里依みたいにできない。素直に思いを吐露することも、相手が受け止めてくれる人だとわかっていても、きっと本質的な部分で信じようとする気がないからできない。それは二階堂のせいではなくて自分のせいなのだ。たとえば、自分のせいで二階堂が変な報道の槍玉にあげられて人気が落ち、それを自分のせいだと言われて距離を置かれたら、それこそ立ち直れない気がした。そんなことになるくらいなら、もう今ここで終わりにしたい。終わりにするのだって、簡単じゃないのだから。
「…私は、里依みたいにはなれない。…なれないよ…。」
前に泣いたときは、二階堂がいた。映画で泣いた怜花を慰めるわけでもなくからかうわけでもなく、ただ傍にいてくれた。嫌なことを思い出して泣いた夜、抱きしめてくれた温もりのおかげで眠れた。泣くという行為一つとっても、二階堂がついて回る。涙が止まらないのに、もう二階堂に会ってはいけないのに、思い出したくないのに、目を閉じると浮かんでしまう。
軽く笑い飛ばしてほしい、ふわっと笑ってほしい、美味しいって言ってほしい。してあげられることはもう何もないのに、してほしいことばかり浮かぶなんて、本当にわがままでどうしようもない。
考えあぐねた末、最後に怜花ができることは、二階堂にとっての人生のリスクを減らすことだという結論に至った。すなわち、この関係を解消し、二階堂を自由にすること。
「…自由です、二階堂さんは。」
(たくさん甘えてごめんなさい。何も返せなくてごめんなさい。あなたの優しさを受け取るべき人は私じゃない。)
応援を伝えるための指に、もう勇気はなかった。さっきまで読めていたスマートフォン上の記事が、もう読めない。視界がゆらゆらと揺れる。今なら引き返せる。二階堂の連絡先を消して、今までのやり取りもなかったことにして、一緒に過ごした時間の何もかもを白紙にする。そもそも、最初から全部間違っていた。二階堂が優しかったから、手を差し伸べてくれたから掴んでしまったけれど、それは正しくなかったことのように今は思える。たった3ヶ月のことを忘れるなんて、きっと簡単だ。できる。できなくちゃ困る。
かつて里依に言った「悩んでる分だけその気持ちは本物」という言葉が、今更ながら自分に返ってくる。とんだ皮肉だと自分でも思う。あんなに偉そうに語った自分は、悩んでいる分だけ本物の気持ちに蓋をしようとしているのに。蓋をせずまっすぐに向き合った里依は、今あんなに幸せそうに三澄の隣で笑っていることを知っているのに。
「…里依…私には無理…。」
里依みたいにできない。素直に思いを吐露することも、相手が受け止めてくれる人だとわかっていても、きっと本質的な部分で信じようとする気がないからできない。それは二階堂のせいではなくて自分のせいなのだ。たとえば、自分のせいで二階堂が変な報道の槍玉にあげられて人気が落ち、それを自分のせいだと言われて距離を置かれたら、それこそ立ち直れない気がした。そんなことになるくらいなら、もう今ここで終わりにしたい。終わりにするのだって、簡単じゃないのだから。
「…私は、里依みたいにはなれない。…なれないよ…。」
前に泣いたときは、二階堂がいた。映画で泣いた怜花を慰めるわけでもなくからかうわけでもなく、ただ傍にいてくれた。嫌なことを思い出して泣いた夜、抱きしめてくれた温もりのおかげで眠れた。泣くという行為一つとっても、二階堂がついて回る。涙が止まらないのに、もう二階堂に会ってはいけないのに、思い出したくないのに、目を閉じると浮かんでしまう。
軽く笑い飛ばしてほしい、ふわっと笑ってほしい、美味しいって言ってほしい。してあげられることはもう何もないのに、してほしいことばかり浮かぶなんて、本当にわがままでどうしようもない。
考えあぐねた末、最後に怜花ができることは、二階堂にとっての人生のリスクを減らすことだという結論に至った。すなわち、この関係を解消し、二階堂を自由にすること。
「…自由です、二階堂さんは。」
(たくさん甘えてごめんなさい。何も返せなくてごめんなさい。あなたの優しさを受け取るべき人は私じゃない。)