夜を繋いで君と行く
* * *
ライブが終わり、月曜は夜のラジオまでは休みだった。午前中はほぼ寝て過ごし、昼に差し掛かる頃にゆっくりと活動を開始した。
(…声、聞きたい。…一番は、会いたいけど。)
ライブ本番が近付くにつれてリハにも熱が入り、そのままみんなで食事に行く流れが出来上がったことで、二階堂の夜の時間も潰れ、隙間という隙間はいつもの仕事と、追加の仕事で埋まった。本当に家に寝るためだけに帰るような生活をしていたのに、ふと思考が自由になると、怜花は今何をしているのか、今日は何を作ったのか、そんなことばかりが気になって、そういう会話がしたくてたまらなかった。
仮の立場では、もういられないのかもしれない。そんなことも考える。いられない、のではなく正しく言えばいたくない、だった。
(怜花ちゃんから距離を縮めてくることは、…多分ない。手は伸ばせないって言ってたし。)
彼女の方から手を伸ばせなくてもいい。ただ自分が伸ばした手を、受け入れてくれるだけでいい。伸ばした手が拒絶されなかったあの夜のことを、ずっと思い出している。眠れない夜を過ごしていないか、泣いていないか、それだけが気になっている。涙を見せるのを厭う人だと思うから、その涙の気配に気付いてただ、傍に居たかった。慰められることもきっと求めていないだろうけれど、傍に居るだけなら許してもらえる。彼女は優しすぎて、人を強く拒めない。そこにつけこんで居心地が良い関係を選んで、彼女の優しさと真面目さを独占した。
(怜花ちゃんにズルいところなんて、一つもなかった。最初から。自分でどうにかするって言ってもんなぁ。)
一人でどうにかさせたくなかった。俯いてほしくなかった。あんなに可愛く笑えるのに、時折どこか悲しそうに微笑むのが悲しかった。一緒にいるときに色んな顔を見せてくれることが嬉しくて、楽しくて。その気持ちをなぜか彼女にはそのまま伝えることができて。伝えすぎた時はほんのりと赤く染まる耳でやりすぎたことを知って、少し減らしてみたり、我慢できずに言って微調整に失敗したりもした。失敗しても、少し怒った素振りを見せるだけですぐに笑って許してくれていた。そういう優しさが当たり前みたいに自分に向けられていることが、単純に初めてで新鮮で、ただ嬉しかった。
(怜花ちゃん、仕事中だろうけど予定を聞くLINEくらいなら…大丈夫か?)
ライブが終わり、月曜は夜のラジオまでは休みだった。午前中はほぼ寝て過ごし、昼に差し掛かる頃にゆっくりと活動を開始した。
(…声、聞きたい。…一番は、会いたいけど。)
ライブ本番が近付くにつれてリハにも熱が入り、そのままみんなで食事に行く流れが出来上がったことで、二階堂の夜の時間も潰れ、隙間という隙間はいつもの仕事と、追加の仕事で埋まった。本当に家に寝るためだけに帰るような生活をしていたのに、ふと思考が自由になると、怜花は今何をしているのか、今日は何を作ったのか、そんなことばかりが気になって、そういう会話がしたくてたまらなかった。
仮の立場では、もういられないのかもしれない。そんなことも考える。いられない、のではなく正しく言えばいたくない、だった。
(怜花ちゃんから距離を縮めてくることは、…多分ない。手は伸ばせないって言ってたし。)
彼女の方から手を伸ばせなくてもいい。ただ自分が伸ばした手を、受け入れてくれるだけでいい。伸ばした手が拒絶されなかったあの夜のことを、ずっと思い出している。眠れない夜を過ごしていないか、泣いていないか、それだけが気になっている。涙を見せるのを厭う人だと思うから、その涙の気配に気付いてただ、傍に居たかった。慰められることもきっと求めていないだろうけれど、傍に居るだけなら許してもらえる。彼女は優しすぎて、人を強く拒めない。そこにつけこんで居心地が良い関係を選んで、彼女の優しさと真面目さを独占した。
(怜花ちゃんにズルいところなんて、一つもなかった。最初から。自分でどうにかするって言ってもんなぁ。)
一人でどうにかさせたくなかった。俯いてほしくなかった。あんなに可愛く笑えるのに、時折どこか悲しそうに微笑むのが悲しかった。一緒にいるときに色んな顔を見せてくれることが嬉しくて、楽しくて。その気持ちをなぜか彼女にはそのまま伝えることができて。伝えすぎた時はほんのりと赤く染まる耳でやりすぎたことを知って、少し減らしてみたり、我慢できずに言って微調整に失敗したりもした。失敗しても、少し怒った素振りを見せるだけですぐに笑って許してくれていた。そういう優しさが当たり前みたいに自分に向けられていることが、単純に初めてで新鮮で、ただ嬉しかった。
(怜花ちゃん、仕事中だろうけど予定を聞くLINEくらいなら…大丈夫か?)