逆ゼロ - The Other Fragments ユキちゃん
ユキちゃん 後編
翌日。私と蓮さんは、ユキちゃんの部屋のドアの前に並んで立っていた。
私の手には、昨日ユキちゃんから借りた「あるもの」が入った紙袋。蓮さんは、私が大好きなバウムクーヘン専門店の手提げを持っている。
もちろん、蓮さんが一緒に来ることはユキちゃんに伝えてあった。でも、だからこそ、私は落ち着かなかった──いろんな意味で。
チャイムの音に応えるようにドアが開くと、そこには、髪も服も、きっと肌も、いつも以上に整えられたユキちゃんが立っていた。
背後から漂う空気はやたら清々しくて……たぶん、シダー系の精油をミストディフューザーで漂わせてる。
私が行くときなんて、いつも高校時代のジャージに寝癖つきで出てくるくせに……なに? 今日のこの気合いの入り方は。
「……あなたが、蓮さん?」
「初めまして。今日は突然お邪魔してしまい、申し訳ありません。これ、よろしければ」
蓮さんが丁寧に紙袋を差し出したその瞬間──ユキちゃんの目がきらりと光った。
ユキちゃんは紙袋には目もくれず、差し出された蓮さんの手を握る。その力の入り具合は、私の位置からでもしっかりわかった。
……ほら来た。やっぱりこうなると思ってた。
いつもはクールなユキちゃんの頬が、ほんのり赤く染まっている。
──やばい、紹介するのをためらっていたのは、まさにこの展開を恐れていたからだったのに。
蓮さんがちょっと困ったように手を引こうとすると、ユキちゃんはさらに一歩前に踏み込み、逃がさないとでもいうように、ガッチリと両手でホールドする。
その様子がなんとも堂々としていて、むしろ清々しいくらいだったから……私は何も言えず、見守るしかなかった。
「薫から何度も写真見せてもらったけど……本物の方が、ずっと素敵」
蓮さんの表情には、ますます困惑の色がにじんでいた。
けれど……客観的に見れば、ハンサムでスタイルのいい男性ふたりが手を取り合っている光景は、どう見ても絵になっていて……なんというか、映画のワンシーンみたいだ。
──いや、だめだめ、見惚れてる場合じゃない。
「ねぇ、蓮さん。薫じゃなくて私にしない? 料理の腕なら断然私のほうが上だし、女子力にはそこそこ自信あるの。少なくとも、薫相手なら圧勝ね」
私の手には、昨日ユキちゃんから借りた「あるもの」が入った紙袋。蓮さんは、私が大好きなバウムクーヘン専門店の手提げを持っている。
もちろん、蓮さんが一緒に来ることはユキちゃんに伝えてあった。でも、だからこそ、私は落ち着かなかった──いろんな意味で。
チャイムの音に応えるようにドアが開くと、そこには、髪も服も、きっと肌も、いつも以上に整えられたユキちゃんが立っていた。
背後から漂う空気はやたら清々しくて……たぶん、シダー系の精油をミストディフューザーで漂わせてる。
私が行くときなんて、いつも高校時代のジャージに寝癖つきで出てくるくせに……なに? 今日のこの気合いの入り方は。
「……あなたが、蓮さん?」
「初めまして。今日は突然お邪魔してしまい、申し訳ありません。これ、よろしければ」
蓮さんが丁寧に紙袋を差し出したその瞬間──ユキちゃんの目がきらりと光った。
ユキちゃんは紙袋には目もくれず、差し出された蓮さんの手を握る。その力の入り具合は、私の位置からでもしっかりわかった。
……ほら来た。やっぱりこうなると思ってた。
いつもはクールなユキちゃんの頬が、ほんのり赤く染まっている。
──やばい、紹介するのをためらっていたのは、まさにこの展開を恐れていたからだったのに。
蓮さんがちょっと困ったように手を引こうとすると、ユキちゃんはさらに一歩前に踏み込み、逃がさないとでもいうように、ガッチリと両手でホールドする。
その様子がなんとも堂々としていて、むしろ清々しいくらいだったから……私は何も言えず、見守るしかなかった。
「薫から何度も写真見せてもらったけど……本物の方が、ずっと素敵」
蓮さんの表情には、ますます困惑の色がにじんでいた。
けれど……客観的に見れば、ハンサムでスタイルのいい男性ふたりが手を取り合っている光景は、どう見ても絵になっていて……なんというか、映画のワンシーンみたいだ。
──いや、だめだめ、見惚れてる場合じゃない。
「ねぇ、蓮さん。薫じゃなくて私にしない? 料理の腕なら断然私のほうが上だし、女子力にはそこそこ自信あるの。少なくとも、薫相手なら圧勝ね」