逆ゼロ - The Other Fragments ユキちゃん
さすがに黙っていられなくなって、口を挟んだ。
「ちょっと、ユキちゃん。蓮さんは私の恋人! 迫らないって、約束したよね⁉︎」
「だって、本当に好みなんだもん。第一、あんたが今まで見せてくれた蓮さんの写真、どれも顔がぼんやりしてたじゃない? ねぇ、あれ絶対わざとでしょ。ずるいわよ!」
……バレたか。
だって、絶対ユキちゃんの好みに刺さるって、わかってたから……。
私が何も言い返せずにいると、蓮さんがようやく口を開いた。
「……あなたが、ユキちゃん」
「ふふ、そう。友之っていうの。でも、ユキって呼んでくれていいわ。なんなら、『俺のユキ』でも許しちゃう」
そう言って、ユキちゃんはウィンクを飛ばした。悔しいけれど、やっぱりモデルだけあって、とびきり魅力的だ。
「さ、入ってちょうだい。……もしかすると、ここが蓮さんの終の住処になるかもしれないわね」
「やめてユキちゃん、それホラーだから」
広々としたリビングは、洗練されたデザイナーズ家具がおかれるミニマルな空間だ。けれど案内されたのは、中央のイタリア製のソファではなく、いつものコーナーだ。
窓の外からは絶対に見えない、リビングの隅っこ。そこにはパステルイエローの長毛ラグに、ダスティピンクの三人がけフロアソファが置かれている。まわりには、もふもふした愛らしいぬいぐるみたちが並んでいて、壁にはホームシアターのスクリーン。
まるでマカロンの中に迷い込んだみたいな、甘くてやさしい空間だった。
私から紙袋を受け取ると、ユキちゃんはさっそく中身を取り出す。
それは、ラグビーボールのような形をした、ステンレスのオムライス型だった。
「チキンライスはもうできてるから、これで仕上げをするわね。ちょっとだけ待ってて。映画見ながら食べよ?」
そう言って、ユキちゃんは軽やかにキッチンへ消えていった。
「……なるほど」
隣で蓮さんがつぶやく。その表情には、少しだけ安堵の色が混ざっていて、私は改めて誤解させたことを申し訳なく思った。
「ごめんね。ユキちゃん、蓮さんの写真見て、すごく気に入っちゃったみたいだったから、なかなか紹介できなくて」
「……それじゃ、この間、何か言われて照れていたのは……?」
うう、逃げられない……。
「えっと、それはですね……ユキちゃんに、アドバイスをもらってて……」
ちょうどそのとき、ユキちゃんがトレイを持って戻ってきた。
「はーい、お待たせ! ユキちゃん特製、愛情たっぷりハート型オムライスよ」
蓮さんに渡されたオムライスの表面には、ケチャップで「LOVE」の文字。私のには「料理ヘタ!」と書かれていた。
「薫ね、昨日これをあなたに作ってあげるって、張り切って帰ったのよ。でも、スパイスを入れすぎて大失敗」
ユキちゃんはにやりと笑い、からかうように私を見る。
「昨日、この子に教えてあげたの。ナツメグって、ちょっとした催淫効果があるらしいから、試してみなさいよって。そのときは、顔まっ赤にして固まってたくせに……それで、薫ちゃん、あなたは何を入れすぎて失敗したんだっけ?」
「ちょっと、ユキちゃん。蓮さんは私の恋人! 迫らないって、約束したよね⁉︎」
「だって、本当に好みなんだもん。第一、あんたが今まで見せてくれた蓮さんの写真、どれも顔がぼんやりしてたじゃない? ねぇ、あれ絶対わざとでしょ。ずるいわよ!」
……バレたか。
だって、絶対ユキちゃんの好みに刺さるって、わかってたから……。
私が何も言い返せずにいると、蓮さんがようやく口を開いた。
「……あなたが、ユキちゃん」
「ふふ、そう。友之っていうの。でも、ユキって呼んでくれていいわ。なんなら、『俺のユキ』でも許しちゃう」
そう言って、ユキちゃんはウィンクを飛ばした。悔しいけれど、やっぱりモデルだけあって、とびきり魅力的だ。
「さ、入ってちょうだい。……もしかすると、ここが蓮さんの終の住処になるかもしれないわね」
「やめてユキちゃん、それホラーだから」
広々としたリビングは、洗練されたデザイナーズ家具がおかれるミニマルな空間だ。けれど案内されたのは、中央のイタリア製のソファではなく、いつものコーナーだ。
窓の外からは絶対に見えない、リビングの隅っこ。そこにはパステルイエローの長毛ラグに、ダスティピンクの三人がけフロアソファが置かれている。まわりには、もふもふした愛らしいぬいぐるみたちが並んでいて、壁にはホームシアターのスクリーン。
まるでマカロンの中に迷い込んだみたいな、甘くてやさしい空間だった。
私から紙袋を受け取ると、ユキちゃんはさっそく中身を取り出す。
それは、ラグビーボールのような形をした、ステンレスのオムライス型だった。
「チキンライスはもうできてるから、これで仕上げをするわね。ちょっとだけ待ってて。映画見ながら食べよ?」
そう言って、ユキちゃんは軽やかにキッチンへ消えていった。
「……なるほど」
隣で蓮さんがつぶやく。その表情には、少しだけ安堵の色が混ざっていて、私は改めて誤解させたことを申し訳なく思った。
「ごめんね。ユキちゃん、蓮さんの写真見て、すごく気に入っちゃったみたいだったから、なかなか紹介できなくて」
「……それじゃ、この間、何か言われて照れていたのは……?」
うう、逃げられない……。
「えっと、それはですね……ユキちゃんに、アドバイスをもらってて……」
ちょうどそのとき、ユキちゃんがトレイを持って戻ってきた。
「はーい、お待たせ! ユキちゃん特製、愛情たっぷりハート型オムライスよ」
蓮さんに渡されたオムライスの表面には、ケチャップで「LOVE」の文字。私のには「料理ヘタ!」と書かれていた。
「薫ね、昨日これをあなたに作ってあげるって、張り切って帰ったのよ。でも、スパイスを入れすぎて大失敗」
ユキちゃんはにやりと笑い、からかうように私を見る。
「昨日、この子に教えてあげたの。ナツメグって、ちょっとした催淫効果があるらしいから、試してみなさいよって。そのときは、顔まっ赤にして固まってたくせに……それで、薫ちゃん、あなたは何を入れすぎて失敗したんだっけ?」