大好きな旦那様が見えなくなってから、本当の夫婦になるまで

第5話 旦那様の声が聞こえない

『君の中に《魔法の種子》はないかもしれない。でも、もし疑似的な種子を取り込めば彼の役に立つかもしれないけど、やってみるかい?』

 そう誰かに問われたけれど、あれば誰だっただろう。私は魔力無しで、それを憂いていたときに声をかけてきたのは──。
 ふと意識が浮かび上がるのを感じ、重たい瞼を開けると見慣れた天井が目に入った。

「……私、眠って?」
「奥様!」

 真っ先にハンナの顔が飛びこんできた。
 泣き出す姿はこっちが驚くほどで、主治医の話だと私は丸一日眠っていたらしい。

「意識が途絶える前の記憶は、ありますかな?」
「は、はい。旦那様と話をしていたら急に視界が真っ暗になって……」
「その内容は?」

 記憶を遡っても思い出せるのは、侍女がラズベリーのお茶を出してくれて、旦那様がなにか話そうとしたところまでだった。

「旦那様と()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」
「ふむ。その後、公爵様は何か言われましたか?」
「いえ……」
「……なるほど。やはり、それが引き金なのでしょうね」

 引き金?
 なんのことだろう。小首をかしげる。
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