大好きな旦那様が見えなくなってから、本当の夫婦になるまで

 私の絶叫も困惑も無視して、ルディー様はにっこりと微笑んだ。声も弾んでいて、終始楽しそうなのが余計に怖い。
 周囲を見渡すと客間ではなく何処かの地下室だろうか。窓が見当たらない。

 自分の両太ももまで木の幹に取り込まれており、その速度はゆっくりと確実に私の体を浸食していく。よく見ると、木の枝は有象無象に動き外へ外へと急成長していて生き物のようで不気味だった。
 足をばたつかせようとしても、すでにつま先はもちろん太ももの感覚がない。その事実に泣きそうになりながらもルディー様に向かって睨んだ。

「ふふっ、いいね。私にだけ熱い眼差しをむけてくれて嬉しいよ」
「ルディー様、どうしてこんなことを!?」
「私? 違うよ。君が今まで温めていた種が発芽し、本来の姿に戻ろうとしているだけで、私は何もしていない。直接はね」
「何を……言っているのですか?」
「なんだ、()()()()()()()()()()()()()()()。まあ、私があの時の記憶そのものを、改竄したからしょうがないか」

 彼の言葉に私は眉をひそめる。
 あの時?
 全く身に覚えがない。
 学院時代に彼の研究を手伝ったことがあるものの、そのことを言っているのだろうか。

「何を……言っているのですか?」
「本当に覚えていないんだな。ここまで完璧に隠蔽できているとは、自分が自分で怖くなる」
「ルディー様?」
「ははっ、ははははははっ、あははははははははっはははははははははっ!! ああ、可笑しい。私をこんな風にしたのは君だというのに。どこまでも無自覚で、愚かなのだろう。ああ、本当にいじらしくて憎らしくて、愛おしい」
< 33 / 59 >

この作品をシェア

pagetop