大好きな旦那様が見えなくなってから、本当の夫婦になるまで

 酷く優しいルディー様の声音に、安堵と少しの違和感が生じた。何か口にしようとしたが、喉がカラカラなせいで上手く声が出ない。

「在学中は種が芽吹かなかったから失敗かと思っていたけれど、どうやらそんなことはなかったようで安心したよ」
「え? ルディー……さぁ」

 舌がもつれるせいでうまく喋れなかった。
 息をするのも苦しい。
 ルディー様は鼻歌を歌い、楽しそうに声をかける。何がそんなに楽しいのだろう。そう思いつつ自分の体が動かないことに違和感を覚え周囲を見回した直後、目を疑った。

「きゃあああああ、な、何これ!?」
「ああ、あんまり激しく動かない方がいいかな。君の体が《世界樹》に取り込まれつつある今、もがけばもがくほど幹の中に取り込まれて樹幹(じゅかん)と同化するのが早まるよ」
(世界樹? 同化? え、な?)

 《疑似種子》が《世界樹》と聞いて、背筋が凍りついた。ディフラのゲーム設定で存在だけはあった《世界の種》のことだとすると、花女神がこの世界を去るときに宿っていた(媒体)とされる神具であり、人外の地に厚く封じていたものだ。

「(本当だとしたら私が使っていた能力は魔力吸収(マジック・ドレイン)という現象ではなく、器に引き寄せられ《赤い果実》として結晶化しただけ? 私の体内に取り込まれなかったのは、私自身への影響を考えて?)……な、どうしてこんなことを考えついたのですか!?」
「ふふ……」
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