大好きな旦那様が見えなくなってから、本当の夫婦になるまで

 ベルナルド様。
 恋い焦がれるほど慕っていた思いも全て奪われて、彼をなぜ好きになったの記憶も──奪われつつある。

(姿、声、思い、最後には記憶まで奪うっていうの?)

 ふと私の胸に、血よりも真っ赤な薔薇が咲き誇っているのが見えた。その花は、硝子ように硬化していく。

「(この色、《赤い果実》にそっくり……)これ……」
「かつて花女神が奪われた《赤い果実》に最も近い結晶ですよ。この国は新たな花女神の化身となった世界樹に抱かれて、遅かれ早かれ滅ぶだろうね」

 想像するだけでゾッとしてしまった。
 ルディー様は滅びゆく国を想像し喉を鳴らして笑っている。

「この屋敷から王都まで、かなりの距離があるはずなのに……」
「王都までの道中で質のいい魔力を得たからだろう。何十、何百という人の魔力を吸い尽くしてできた一級品の《赤い果実》は、伝承と同じく美しい。……王都へ謎の樹木が魔力を吸い尽くそうとする、()()()()()()()()()()()()()()()()、《()()()()()()()()()()()()()()
「!?」

 だからルディー様は、ベルナルド様が私を殺しい来ると言ったのだ。最後の最後まで彼に屈辱と絶望を与えるために、この舞台を用意した。

「ベルナルドがどんな顔をして君を殺すのか、あるいはここに辿り着く前に殺されるのか。……ああ、どちらに転んでも素晴らしい終わりだ」
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