大好きな旦那様が見えなくなってから、本当の夫婦になるまで
その言葉を聞いて、背筋が凍りついた。《魔法の種子》がなくて魔力吸収を使う令嬢――シャルしかいない。ただ令嬢と言っているのなら、続編ではシャルは誰とも結婚していないと言うことになるのだろうか。その段階でゲームとは大きくずれている。
「王都内に住む女性を探したのですが、心当たりはないと……。それでルディー先生に相談をしたら、王妃様と国王陛下との謁見する手続きをしてくださったのです」
ここでディフラプレイ経験者として、違和感を覚えた。確かに続編やシリーズ化はあり得なくないのだが、あのディフラにしてはシリーズ2内容が薄い。
ルディーがどのように聞きかじっているか分からないが、できるだけ彼女の情報を聞き出してアイリスと相談するのが得策だろう。
「そう。ところで続編のヒロインは、貴女になるのかしら? そして攻略キャラや敵対する可能性のある名前、シナリオの展開もあるだけ詳細に話してちょうだい」
「はい! まずその魔力無し令嬢を囲って悪事を画策しているのは、魔法学院ローマン教頭と、辺境に領土を持つベルナルド様です」
「へえ」
シリーズ2で、ベルナルドが出てくるとは意外だった。どのルートでも大抵悪役で死ぬのだから。なによりこの世界では、シャルと結ばれている。
国のために働く番犬であっても、妻を蔑ろにするようなことはしないだろう。ローマン教頭も花女神の復活を目論んでいたが、アイリスに阻止されて《花女神堕とし》計画も頓挫した。あっちも紆余曲折ありつつも、今は結婚しておしどり夫婦と呼ばれている。
「攻略キャラは?」
「あ。えっと……すみません。その部分は、ぽっかり忘れてしまって」
「(いやいやありえないでしょう。続編って言うなら新規キャラ入れるもんだからね!?)そう、……シナリオ通りだと、どうなるのかしら?」
エウレカは私が信じていると思っているのか、饒舌に語る。むしろ親友を貶めるような言い方をして、ブチ切れ寸前なのだから。ふふふ。
「ローマン教頭はシリーズ1で花女神復活計画が失敗したリベンジのため、令嬢を使って《花女神堕とし》を発動するルートと、辺境の領地を持つベルナルド公爵様は令嬢に《赤い果実》を与え続け、疑似花女神を生み出した結果、暴走させるというルートです」
「(あの冷血漢は性格に関してはアレだけれど、国への忠誠心は高い。それがなぜ?)……公爵が凶行には知った理由というのは?」
「シナリオでは辺境地は作物野育ちが悪く、国全体も凶作が続くことを解決するため、疑似花女神を計画し少ない犠牲で領土を豊かにするのが目的だったそうです。ただ疑似花女神の暴走は想定外だったと語っていました」
(……なるほど。ベルナルドとローマン教頭を、悪役に仕立てたい勢力がいるってことね)
ローマン教頭は自分の魔力暴走を食い止めるため、長年に渡って花女神の研究をしていたから、信憑性はあったけれど、その問題は私たちが解決した。でもベルナルドの場合、そうなるように周囲が貶めるのなら充分にあり得る話だ。正直、あの男がどうなろうと知ったことではないが、シャルが渦中にいるのはいただけない。