片思い7年目
しかし、優太は全部知った上で結季奈を選んだ。いくら陰口とはいえ、言われていた本人が優太に話せばバレる。優太はいつもファミレスで「酷いなあ」と困った顔で眉を下げて私たちの話を聞いていた。
自分の幼馴染や友達を貶す相手と恋に落ちたのはなぜだろう。二人が付き合い始めた大学二年の冬からずっと考えているが、答えは分からない。悪者が謝るといい子に見えるから? むしろ結季奈への愚痴を話す私たちのほうが卑しかった? 私が思うほど優太は優しい人間ではなかったの? いや、優しいから結季奈を見捨てられない理由でもあるの? それとも、私の気持ちが邪魔だった? 私の恋を諦めさせるには結季奈を選ぶのが最適だと思った?
「ぐるぐるする」
「窓開けるか」
窓から入る弱い風の微妙な温かささえ今は気持ちがいい。千颯は夕食を残したまま、窓の近くの椅子に座った。
「千颯はなんで、そんなに受け止めるの早いのよ」
「受け止めきれてへんで。あんな性悪女選ぶなんてアホやと思う。美代子の方が、いや、比べるのも美代子に申し訳ないくらいやわ」
「はいはい」
「悪口ばっかり聞かされてた女に惚れてまうなんて、俺にはよお分からんし。けどな、優太は俺らが思うほどええ奴やなかったんかもしれへん。俺らは、俺らが思うほど優太の特別ではなかったのかもしれへん。そう思うんよ」
「めっちゃ喋るじゃん」
私がこの世で一番優太を好きな自信があった。千颯はきっと、優太のことをこの世で一番の友達だと信じていた。私たちは彼に惹かれすぎてどこか神格化していたのかもしれない。
千颯は前髪を夜風に靡かせながら、スマホに指を滑らせ始めた。本音を吐きだした後の部屋の空気は気恥ずかしさと悲しさが入り混じって、これ以上言葉を紡ぐのを憚らせる。私たちに変わって、虫の音が静寂を埋めてくれた。
自分の幼馴染や友達を貶す相手と恋に落ちたのはなぜだろう。二人が付き合い始めた大学二年の冬からずっと考えているが、答えは分からない。悪者が謝るといい子に見えるから? むしろ結季奈への愚痴を話す私たちのほうが卑しかった? 私が思うほど優太は優しい人間ではなかったの? いや、優しいから結季奈を見捨てられない理由でもあるの? それとも、私の気持ちが邪魔だった? 私の恋を諦めさせるには結季奈を選ぶのが最適だと思った?
「ぐるぐるする」
「窓開けるか」
窓から入る弱い風の微妙な温かささえ今は気持ちがいい。千颯は夕食を残したまま、窓の近くの椅子に座った。
「千颯はなんで、そんなに受け止めるの早いのよ」
「受け止めきれてへんで。あんな性悪女選ぶなんてアホやと思う。美代子の方が、いや、比べるのも美代子に申し訳ないくらいやわ」
「はいはい」
「悪口ばっかり聞かされてた女に惚れてまうなんて、俺にはよお分からんし。けどな、優太は俺らが思うほどええ奴やなかったんかもしれへん。俺らは、俺らが思うほど優太の特別ではなかったのかもしれへん。そう思うんよ」
「めっちゃ喋るじゃん」
私がこの世で一番優太を好きな自信があった。千颯はきっと、優太のことをこの世で一番の友達だと信じていた。私たちは彼に惹かれすぎてどこか神格化していたのかもしれない。
千颯は前髪を夜風に靡かせながら、スマホに指を滑らせ始めた。本音を吐きだした後の部屋の空気は気恥ずかしさと悲しさが入り混じって、これ以上言葉を紡ぐのを憚らせる。私たちに変わって、虫の音が静寂を埋めてくれた。