沈丁花奇譚
 やおら恐る恐る後ろを振り返ると、人間離れをした美しい男が柔らかな光をまとって正座をしていたのだ。
 これは幻?ううん、違う。私の目の前にいるのだ。
 薄紫がかった、ぬばたまの長い黒髪。
長いまつ毛、うるみと憂いを帯びた黒翡翠の瞳、異国情緒漂わせる切れ長の二重瞼に
白味を帯びた肌…。
 この眉目秀麗な男が私を包み込んでいたのだから嘘ではない。
 私をどうしようというのか。
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