彼と妹と私の恋物語…結婚2週間で離婚した姉が再婚できない理由…
警察の捜査は、驚くべき事実を次々と明るみに出した。
麻友には異常なまでの執着愛の傾向があり、彼女が「運命の人」と思い込んだ男性に近づく女性は、ことごとく不幸な目に遭っていた。さらに、彼女の過去を洗ううち、不審な死がいくつも浮かび上がってきた。実の両親の刺殺、姉の刺殺。いずれも当時は証拠不十分だったが、今回の事件を機に再捜査が行われ、すべてが麻友の凶行であったことが断定された。
そして、京子が提出した資料と証言により、7年前に起きた「茅野百合の転落死」も、事故ではなく殺人事件として再捜査が開始される。百合が楓と秋太の仲を応援していたことに嫉妬した麻友が、口論の末に突き落とした――それが、すべての真相だった。
指名手配された麻友が、数日間、忽然と姿を消した。
その間、秋太は実家の自室で、静かに時が過ぎるのを待っていた。
祖父の家に養子に行って以来、ずっと戻ることを拒んできたこの家。父に請われ副社長になってからも、楓と暮らしたあのマンションで、いつか彼女が帰ってくるのを待つつもりだった。
だが、楓が失踪した後、麻友のストーカー行為は常軌を逸していった。合鍵を勝手に作り、留守中に何度もマンションに忍び込んでいたのだ。楓との思い出が詰まった神聖な場所が、麻友によって汚されていくことに、秋太は耐えられなかった。
楓が帰るべき場所を守るため、そして自身の安全のため、彼はやむなく実家に戻ることを決めたのだ。
しかし、心を閉ざした秋太は、家族とほとんど言葉を交わすことはなかった。
その夜、嵐のように雨が降りしきる中、事件は起きた。
宗田家の重厚な門扉を、狂ったように叩く者がいた。インターホンのモニターに映し出されたのは、雨に濡れそぼり、鬼の形相をした内藤麻友だった。
「秋太さん!私よ、麻友よ!開けて!私を中に入れて!」
運転手の鴨川が、冷静にインターホン越しに応対する。
「内藤様、お引き取りください。これ以上騒がれると警察を呼びます」
「うるさい!秋太さんに会わせなさい!私たちは結ばれる運命なのよ!」
麻友は金切り声を上げると、どこから手に入れたのか、バールのようなもので門扉をこじ開けようとし始めた。
その異常な光景を、秋太は2階の自室の窓から、冷たい瞳で見下ろしていた。
鴨川は、少しも慌てることなく、ポケットからスマートフォンを取り出し、警察へ通報する。
「…ええ、指名手配中の内藤麻友です。確保をお願いします」
数分後。
けたたましいサイレンの音と共に、数台のパトカーが宗田家の前に集結した。
すべてを失い、追い詰められた麻友は、最後の望みをかけて秋太に駆け寄ろうとした。
「秋太さん!私と一緒になりましょう!二人でどこか遠くへ…!」
狂気に満ちた声で叫びながら秋太の名を呼ぶが、その前に屈強な刑事たちが立ちはだかり、彼女の両腕を取り押さえた。
「離しなさい!私は、秋太さんと結婚するのよ!秋太さんの妻は私なのよ!」
雨の中、泥だらけになりながらも叫び続ける麻友の姿は、あまりに哀れで、滑稽だった。
パトカーの後部座席に押し込まれ、遠ざかっていくサイレンの音を聞きながら、秋太は静かにカーテンを閉じた。
これで、楓を陥れた元凶の一人が裁かれる。
だが、彼の心は晴れない。本当の戦いは、まだ始まったばかりなのだから。