彼と妹と私の恋物語…結婚2週間で離婚した姉が再婚できない理由…
翌日、京子は意を決して社長室のドアを叩いた。これ以上、この会社に留まるのは危険すぎる。
柊と秋太が再び接触すれば、今度こそすべてが露見してしまう。
「社長、先日申し上げた通り、顧問弁護士の職を辞任させていただきたく存じます」
強い決意を込めて申し出る京子に、社長の宗田翔太は穏やかに、しかし断固として首を横に振った。
「その件だが、考え直してほしい、鏡先生。君の力なくして、この会社の不正送金問題を解決することはできない。プロとして、仕事を途中で投げ出すのかね?」
「しかし、その件に関しては。すでに解決しておりますので」
「それだけではない。これからも、不正は起こりうることだ。それに…君は、語学が達者だそうだね?」
「え?」
翔太はそっとスマホを取り出し動画を見せた。
その動画は、京子が受付前でフランス人と何か喋っている様子だった。
傍の受付嬢は困った顔をして、京子が対応してくれたことで助かった様子。
「すまないね、こんな動画を見せて。受付嬢が困っているところを助けてもらったと話してくれてね。防犯カメラを確認したら、とてもきれいなフランス語を話している先生を確認して。ちょっと感動したんだよ」
「…すぐに削除してください…」
「言いたいことはわかる。だが、それだけ先生を手放したくないということなんだ。それに…先生を見ていると、ある女性を思い出す。…その女性に…私はどうしても謝りたい…」
何を言っているの?と、京子は翔太を見た。
翔太は遠い目をして、悔いていた。
「…今回の不正には7年前に、濡れ衣を着せられいなくなってしまったある女性の事も含まれている」
7年前に濡れ衣を着せられ…そう聞くと、京子の瞳が揺れた。
「…私は彼女を信じてあげられなかった。…いいや、信じ切る勇気がなかったのかもしれない。…息子の、大切な人なのに。…」
ギュッと唇をかんだ京子。
その瞳には、深い怒りがこもっている。
「こんな話を先生にするのは気が引けるが。…私と息子は、親子関係があまりよくない。いや、私というより息子と母親の関係性が特によくないと言った方が正しい」
ふーっと深く息を吐くと、翔太は語り始めた。
秋太は年の離れた双子の兄と姉に挟まれて、いつも我慢しているようだったと。
いつしか母親に「学校行事には一切来なくていい」と言い出した。
理由を聞いても答えず。ずっと、母親との距離を置いていた。
そして突然、小学校二年生にの時、祖父の家に養子に行くと言い出した。
母方の祖父の家は跡取りがおらず、祖父は大手コンサルティング会社の社長で後継ぎを望んでいた。
それで秋太が名乗り出た。
母親は反対したが断固として譲らず養子行った。
だが、祖父は秋太が大学を卒業するときに亡くなった。
その時、まだ秋太はとても跡を継げる状態ではなかったことから、宗田ホールディングスと吸収合併をする決意をした。
新たにコンサルティング部門を設立して、社員全員を受け入れた。
だが秋太は、別の道を選び暫く留学をして別の仕事をしていた。
翔太は秋太に何故そこまでして避けるのか理由を尋ねても何も話してはくれない。
そんな時、兄がこっそり教えてくれた。「秋太、母さんに気を使っていたんだ。足が悪いことで、保護者や生徒たちがヒソヒソと陰口を言っていたから。それが嫌で、母さんに学校に来るなって言ったんだ。俺達の事でも大変そうで。…多分、養子に行けば母さんの負担が減ると思ったんだと思う」と…。