彼と妹と私の恋物語…結婚2週間で離婚した姉が再婚できない理由…
「法的に、君は今も――茅野楓は、僕の妻のままだ」
秋太から告げられた事実は、雷となって京子の頭上を撃ち抜いた。
怒り、混乱、そして裏切られたという絶"望が、渦を巻いて心を掻き乱す。
唇が、わなわなと震えた。
「すべて…ご存じだったのですか?私が…茅野楓であると…」
「ああ、気づいていたよ」
秋太の声は、驚くほど穏やかだった。
「初めて、君が鏡京子としてこの会社に来た日…すぐに確証はなかった。でも、俺の心が、ずっと叫んでいたんだ。『楓だ』って…」
「心が…?それだけで…」
「心から愛した人を、忘れることなんてできないよ」
その言葉は、あまりに真っ直ぐで、京子の胸に深く突き刺さった。
「…どうして…!どうしてそんなことを!」
どうして気づいていたのに、知らないふりをしていたのか。
どうして今になって、こんな残酷な真実を告げるのか。
「手放したくなかったからだ」
秋太は、絞り出すように言った。
「君がどこかで生きていると信じていた。いつか必ず見つけ出して、俺の過ちを謝り、もう一度…もう一度やり直したかった。離婚届なんて、出せるはずがなかったんだ」
その言葉は、紛れもなく7年分の彼の後悔と愛情の証明だった。
だが、今の京子には、自分を縛り付ける呪いの鎖にしか聞こえなかった。
どうして。なぜ、離婚届を出さなかったの?
私を憎んでいたはずじゃなかったの?横領犯の妻という汚名を、なぜ消さなかったの?
困惑と、怒りと、そして心の奥底から湧き上がる、説明のつかない感情に京子は言葉を失った。
そんな京子の葛藤を見透かすように、秋太は静かに続けた。
「離婚届を出さなかったのは、僕の決意の証だ。君と結婚した時、生涯愛しぬくと誓った。それは、病める時も、健やかなる時も同じだ。だから、たとえ君が本当に罪を犯していたとしても…僕は、離婚するという選択肢は持たない」
その言葉に、京子はギュッと唇を噛み締めた。
何かを言い返したいのに、喉に何かが張り付いて言葉にならない。
「ねぇ…もし逆の立場だったら、君はどうする?僕が罪を犯したら、君は僕をあっさり捨てて、離婚するのか?」
その問いが、京子の胸を鋭く突いた。
できるはずがない。たとえ彼がどんな罪を犯そうと、見捨てることなど…。
顔をそむける京子に、秋太がゆっくりと近づく気配がした。
「僕は、愛する人が、たとえ殺人犯として死刑を宣告されたとしても、離婚はしない。愛する人の罪は、僕の罪でもあるからだ」