彼と妹と私の恋物語…結婚2週間で離婚した姉が再婚できない理由…

「あ…いや…。おじいちゃんの家に養子に行くことを決めたのは、僕なんだけど。…どこかで、止めてほしいって思っていた。やっぱり戻って来いって、迎えに来てくれるって期待していた…」
(…そうだったの…)
「…もういいよ。…僕が選んだことだから…。今、母さんの本当の気持ちが聞けたから…」

電話の向こうで、トワが息をのむ気配がした。
「…秋太…」
トワの声が、わずかに震えているのが受話器越しに伝わってくる。
「…私、本当に馬鹿だったわ。秋太が、どんなに辛い思いをしていたか…わかってあげられなくて」
トワの声が、途切れ途切れになる。きっと、電話の向こうで涙ぐんでいるのだろう。その様子が目に浮かび、秋太の胸も締め付けられた。
「母さん、泣かないでよ。…俺も、ちゃんと話さなかったのが悪かったんだ」
秋太の言葉に、トワは小さく嗚咽を漏らした。
「いいえ。私が、もっと早く気づいてあげるべきだった。…秋太は、私にとって、何よりも大切な存在なのに」
トワの言葉が、秋太の心にじんわりと染み渡る。ずっと聞きたかった、母の素直な気持ち。それが、今、電話越しに確かに伝わってきた。

(楓さんと、ちゃんと話すわ。そして、謝ってくる)

トワの決意のこもった声に、秋太はぐっと唇を噛みしめた。
電話の向こうの母の温かい心を感じ、長年のわだかまりが溶けていくのを感じた。

「…楓はきっとわかってくれるよ。彼女も、随分と辛い思いをしてきたんだ。それでも、柊を産んでくれた。僕は、感謝しかないよ…」
(うん…)
「…ありがとう…」

秋太は、それだけを言うのが精一杯だった。声が震えて、うまく言葉が出なかった。
しかし、その短い返事には、秋太の心からの安堵と、母への信頼が込められていた。

電話の向こうのトワも、安堵したように小さく息をつく音が聞こえた。
たとえ離れていても、二人の心は確かに繋がった瞬間だった。
電話を切った後、秋太はしばらく受話器を握りしめ、窓の外の空を見上げた。

< 40 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop