彼と妹と私の恋物語…結婚2週間で離婚した姉が再婚できない理由…
柔らかな光が降り注ぐ、緑に囲まれた小さなチャペル。純白のウェディングドレスに身を包んだ楓は、隣に立つタキシード姿の秋太がそっと手を握ると、その温かさに心が和らぎ、自然と笑みがこぼれた。
誓いの言葉を交わし、指輪を交換する。集まってくれた親しい人々の温かい拍手に包まれ、楓は、これが本当の幸せなのだと、心の底から感じていた。
式の後、フラワーシャワーが舞う中、チャペルの外へ出た二人の幸せな姿を、少し離れた木陰から見つめる初老の夫婦がいた。楓は、その姿を認めた瞬間、幸せの絶頂から冷たい現実に引き戻されたように、さっと表情を凍らせた。母の梢と、父の凪だった。
楓は無意識に背を向けようとする。だが、二人は意を決したように、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってきた。その憔悴しきった顔には、長年の深い後悔が刻まれている。
「楓…」
母の梢が、震える声で呼びかけた。
「きれいよ…。本当に、きれいな花嫁姿だわ…」
「…今更、何をしに来たんですか」
楓の声は、自分でも驚くほど冷たく響いた。その声に、父の凪は深く、深く頭を下げた。
「許してくれとは言わん。だが、これだけは聞いてくれないか」
凪は、顔を上げると、苦渋に満ちた表情で語り始めた。
「お前が病気で早退したあの日…玄関で倒れていたと、後になって交代のお手伝いさんから聞いた。私たちは、すぐにその日当番だったお手伝いを問い詰め、解雇した。彼女は『楓様の帰りが遅かっただけだ』と言い訳をしたが、嘘だった。勝手に中抜けし、戻ってこなかったんだ。私たちは…私たちは、そんなことにも気づかず…お前を一人で苦しませてしまった…!」
「百合のことばかりで、必死に頑張っているお前の姿を、ちゃんと見てやれていなかった…」
梢は、涙で言葉を詰まらせた。
「あなたのことを信じきって、甘えて、頼りすぎていたのね…。母親失格よ、私…。本当に、ごめんなさい…楓…」
二人の懺悔の言葉は、楓の固く閉ざした心の扉を叩く。だが、長年の孤独と痛みは、そう簡単には消えない。
「私のことは、もう忘れてください。私はもう、あなたたちの娘ではありませんから」
突き放すような言葉を口にしたその時、秋太が楓の肩を優しく、しかし力強く抱き寄せた。
「楓、もう許してあげよう」
その声は、どこまでも穏やかだった。
「君を本当に苦しめていたのは、ご両親だけじゃない。君自身の、その心の棘なんだ。百合さんも、きっとそれを望んでいる」
秋太の言葉に、はっとする。そうだ、百合はいつも言っていた。「お父さんとお母さんを、許してあげて」と。
「楓」
凪が、一歩前に進み出た。
「どんなことがあっても、お前は、私たちの大切な、たった一人の娘だよ。いつでも、頼っていい。いつでも、帰ってきていいんだからな」
その言葉は、楓が幼い頃から、ずっと聞きたかった言葉だった。
重い空気が流れる中、柊が凪の足元へ歩み寄った。
人見知りしない柊は、興味深そうに凪の顔を見上げている。
「ぼうや、おいで」
凪がおずおずと手を差し出すと、柊は素直にその腕の中に収まった。
凪は、震える手でそっと柊を抱き上げる。その瞬間、凪の瞳から大粒の涙が溢れ出した。
「…ああ…楓の、小さい頃に、そっくりだ…」
高い景色に喜ぶ柊の無邪気な笑顔が、何十年という厚い氷の壁を、一瞬にして溶かしていく。
その光景に、翔太とトワが優しく微笑みながら間に入った。
「さあさあ、お父様、お母様。こんなところで立ち話もなんですから。あちらで、ゆっくりお話を」
その温かい一言が、最後のきっかけとなった。楓は、溢れ出す涙を止めることができず、ただ静かに頷いた。それは、長い、長い冬が終わりを告げた瞬間だった。
それから、少しずつ、だが確実に関係は修復されていった。週末には両親を交えて食事をし、柊は広い凪の屋敷の庭を駆け回るのがお気に入りになった。楓の心の傷が完全に癒えるにはまだ時間が必要かもしれない。だが、家族の温かい愛情に包まれ、彼女の表情は日に日に柔らかくなっていった。
誓いの言葉を交わし、指輪を交換する。集まってくれた親しい人々の温かい拍手に包まれ、楓は、これが本当の幸せなのだと、心の底から感じていた。
式の後、フラワーシャワーが舞う中、チャペルの外へ出た二人の幸せな姿を、少し離れた木陰から見つめる初老の夫婦がいた。楓は、その姿を認めた瞬間、幸せの絶頂から冷たい現実に引き戻されたように、さっと表情を凍らせた。母の梢と、父の凪だった。
楓は無意識に背を向けようとする。だが、二人は意を決したように、ゆっくりとこちらへ歩み寄ってきた。その憔悴しきった顔には、長年の深い後悔が刻まれている。
「楓…」
母の梢が、震える声で呼びかけた。
「きれいよ…。本当に、きれいな花嫁姿だわ…」
「…今更、何をしに来たんですか」
楓の声は、自分でも驚くほど冷たく響いた。その声に、父の凪は深く、深く頭を下げた。
「許してくれとは言わん。だが、これだけは聞いてくれないか」
凪は、顔を上げると、苦渋に満ちた表情で語り始めた。
「お前が病気で早退したあの日…玄関で倒れていたと、後になって交代のお手伝いさんから聞いた。私たちは、すぐにその日当番だったお手伝いを問い詰め、解雇した。彼女は『楓様の帰りが遅かっただけだ』と言い訳をしたが、嘘だった。勝手に中抜けし、戻ってこなかったんだ。私たちは…私たちは、そんなことにも気づかず…お前を一人で苦しませてしまった…!」
「百合のことばかりで、必死に頑張っているお前の姿を、ちゃんと見てやれていなかった…」
梢は、涙で言葉を詰まらせた。
「あなたのことを信じきって、甘えて、頼りすぎていたのね…。母親失格よ、私…。本当に、ごめんなさい…楓…」
二人の懺悔の言葉は、楓の固く閉ざした心の扉を叩く。だが、長年の孤独と痛みは、そう簡単には消えない。
「私のことは、もう忘れてください。私はもう、あなたたちの娘ではありませんから」
突き放すような言葉を口にしたその時、秋太が楓の肩を優しく、しかし力強く抱き寄せた。
「楓、もう許してあげよう」
その声は、どこまでも穏やかだった。
「君を本当に苦しめていたのは、ご両親だけじゃない。君自身の、その心の棘なんだ。百合さんも、きっとそれを望んでいる」
秋太の言葉に、はっとする。そうだ、百合はいつも言っていた。「お父さんとお母さんを、許してあげて」と。
「楓」
凪が、一歩前に進み出た。
「どんなことがあっても、お前は、私たちの大切な、たった一人の娘だよ。いつでも、頼っていい。いつでも、帰ってきていいんだからな」
その言葉は、楓が幼い頃から、ずっと聞きたかった言葉だった。
重い空気が流れる中、柊が凪の足元へ歩み寄った。
人見知りしない柊は、興味深そうに凪の顔を見上げている。
「ぼうや、おいで」
凪がおずおずと手を差し出すと、柊は素直にその腕の中に収まった。
凪は、震える手でそっと柊を抱き上げる。その瞬間、凪の瞳から大粒の涙が溢れ出した。
「…ああ…楓の、小さい頃に、そっくりだ…」
高い景色に喜ぶ柊の無邪気な笑顔が、何十年という厚い氷の壁を、一瞬にして溶かしていく。
その光景に、翔太とトワが優しく微笑みながら間に入った。
「さあさあ、お父様、お母様。こんなところで立ち話もなんですから。あちらで、ゆっくりお話を」
その温かい一言が、最後のきっかけとなった。楓は、溢れ出す涙を止めることができず、ただ静かに頷いた。それは、長い、長い冬が終わりを告げた瞬間だった。
それから、少しずつ、だが確実に関係は修復されていった。週末には両親を交えて食事をし、柊は広い凪の屋敷の庭を駆け回るのがお気に入りになった。楓の心の傷が完全に癒えるにはまだ時間が必要かもしれない。だが、家族の温かい愛情に包まれ、彼女の表情は日に日に柔らかくなっていった。