推しの在る生活
〇月〇日
昨日彼が夕飯を用意した際に減った冷蔵庫の中身を補充すべくわたしは仕事帰りにショッピングセンターに寄った 余程のことがない限り定時に終わるわたしの仕事は世間の定時とほぼ同じなので仕事帰りに買い物する際には人でごった返していた
『人で賑わう』なんて表現もあるがわたしはこういう賑わいが苦手だ ゆっくり落ち着いて買い物もできないし あちこち回って商品をいざレジに持って行っても長い行列でうんざりする
買い物くらいスムーズに終わらせてくれよ と毎回思っている
今日も人で賑わう食品売り場で必要なものを探しているときにそれは起こった
一人の女の子がお菓子の売り場で泣いていた
最初は欲しいお菓子が買ってもらえないから泣いているのかと思ったがどうやら様子が違った
わたしも食後のコーヒータイムのおやつを探していたので見て見ぬふりもできず女の子に声をかけた
「どうしたの? パパママは?」
膝を折り子どもの目線に合わせて話しかける、マニュアル通りの対応で子どもに接した
「ママいないの どこにも」
ー やっぱりな ー
めんどくさいけど仕方ない 子どもがワーワー泣いてる横でゆっくり買い物できないし
わたしは仕方なくショッピングセンターのサービスカウンターまで女の子の手を引いて連れて行った
連れて行く途中でもワンワンなく女の子に周りの視線が集まるのがわかる
気づいてんならあんたらが連れてってやれよ わたしは内心イライラしながらも顔には出さないように努めていた
サービスカウンターで店員に事情を説明している最中に母親らしき人物が現れた どうやらその場にいなかった子どもを探して来たらしい
「ちゃんとお菓子売り場で待ってなさいっていったでしょ! なに勝手にチョロチョロしてんのよ! ママとの約束守れんのっ!!!」
周りの目も気にせず大声を出す
ー あーやだやだ めんどくさい ー
子どもの不安も寂しさも理解しようとしないで真っ先に大声なんだ それでも子どもは親を頼るしかないってのにね
母親は子どもの手を掴んでどこかへ連れて行こうとする際にわたしの方を見た その目はまるで怒りを込めて睨見つけるかのような目だった
わたしはその目にゾッとした 感情を推し量ることは無理だった
母親に手を引かれ連れて行かれる女の子はわたしの方を見て手を振っていた わたしは呆然としながら女の子に手を振り返していた


