私の婚約者は隠れSP!? 〜毎日が甘くて溶けそうです〜
午後になると、書斎で一緒に書類を見る時間があった。悠真の家は政治家の家系だけあって、書斎には膨大な書類や本が整然と並んでいた。
大きなデスクの向こうで、彼は落ち着いた声で書類の内容を説明してくれた。私は彼の隣に座り、書類に目を落とす。だが、正直なところ、内容が頭に入ってこない。隣にいる彼の存在感が、あまりにも強すぎた。
「ここはこうした方が読みやすいですよ」
彼の声に、ハッと我に返る。見ると、彼が私の手に持つ書類を指さし、優しく指摘していた。次の瞬間、彼の手が私の肩にそっと置かれる。その感触に、思わず声が漏れる。
「えっ……肩?」
顔を上げると、彼は微笑んだまま視線を外した。まるで、何も特別なことはしていないと言わんばかりに。
「遥さん、集中できるように少し支えただけです」
その言葉に、心臓が高鳴るのを抑えられない。私は慌てて書類に視線を落とすが、肩に残る彼の手の温もりが、まるで消えないように心に刻まれる。こんな小さな仕草一つで、こんなにも心が揺れるなんて。政略婚のはずなのに、なぜか彼の存在が、私の心を支配していく。