私の婚約者は隠れSP!? 〜毎日が甘くて溶けそうです〜
すると、部屋は静寂に包まれる。
遠くで聞こえる時計の音、窓の外を吹く風の音、そして彼の穏やかな呼吸。すべてが、私の心をそっと揺らす。政略婚という冷たい言葉の裏で、こんなにも温かい時間が流れているなんて、想像もしていなかった。
悠真の優しさは、私の心を溶かし、壊し、そして新しく作り直していくようだった。
私は目を閉じ、彼の腕の中で小さく息をつく。この葛藤、この揺れる心――それでも、彼の隣にいるこの瞬間だけは、すべてを忘れていられた。
愛される資格がないと思っていた私に、彼はそっと手を差し伸べてくれる。その手を取る勇気が、私にあればいいのに――
そう願いながら、私は静かに眠りに落ちていった。