私の婚約者は隠れSP!? 〜毎日が甘くて溶けそうです〜
荷物はすでにまとめられ、トランクに詰め込まれている。それでも、心のどこかで「本当にこれでいいのか」と囁く声が消えない。
「大丈夫、遥さん。荷物は全部こちらで運びますから」
穏やかで、どこか落ち着いた声が背後から響いた。振り返ると、そこには背筋がまっすぐで、まるで絵画から抜け出したような青年が立っていた。
黒い髪は朝の光を受けて柔らかく輝き、知的な瞳は私をまっすぐに見つめている。
彼こそが政略婚の相手であり、政治家の家系に生まれた御曹司、瀬戸悠真。
噂通りの穏やかで洗練された笑顔が、そこにあった。
「そ、そんなに……気を遣わなくても……」
思わず小さな声でつぶやくと、彼は一瞬だけ目を細め、柔らかな笑みを深めた。その笑顔は、まるで私の心のざわめきを見透かしているようだった。