私の婚約者は隠れSP!? 〜毎日が甘くて溶けそうです〜
「君が困らないなら、何も気にする必要はありません」
その言葉に、胸がドキリと高鳴った。シンプルな一言なのに、なぜか温かさが全身に広がっていく。
政略結婚の相手。たったそれだけの関係のはずなのに、彼の声には、私を包み込むような力が宿っていた。この人は、なぜこんなに優しいのだろう。
頭ではわかっている――これはただの取り決め、互いの家のために結ばれた縁だ。それでも、心のどこかで、彼の優しさに触れるたびに、期待が芽生えてしまう自分がいた。
屋敷に到着した瞬間、私は息を呑んだ。目の前に広がるのは、想像を遥かに超える壮麗な建物だった。
白い石造りの外壁は朝日を受けて輝き、長い廊下にはアンティークの装飾が施され、柔らかな光が差し込むリビングは、まるで映画のワンシーンのようだった。庭園には色とりどりの花が咲き乱れ、風に揺れる木々の音が心地よいハーモニーを奏でている。ここは、私がこれから暮らす場所。現実とは思えないほど、すべてが美しく整っていた。
「まずは荷物を置きましょう」
悠真の声にハッと我に返る。彼は私の重いトランクを軽々と持ち上げ、まるでそれが羽のように軽いかのように歩き出した。私は慌てて後を追い、思わず手を伸ばす。
「私、持つから――」
「遥さん、無理はしなくていいです。いつかは夫婦になるんですから」
その言葉に、足が止まった。夫婦……そんな言葉を、こんなにも自然に、優しく投げかけられたのは初めてだった。政略婚という枠組みの中で、私はただの駒でしかないと思っていた。
なのに、彼の声には、私を一人の人間として見てくれているような温かさがあった。胸の奥がじんわりと熱くなり、思わず目を伏せる。こんな気持ち、予想していなかった。