私の婚約者は隠れSP!? 〜毎日が甘くて溶けそうです〜
「僕の手を握ってください」
その声は、いつも通りの優しさに満ちているのに、どこか力強い意志が感じられた。私は思わずその手を握る。彼の手は、いつも通り温かく、私を安心させるような強さで私の指を包み込んだ。
だが、その力強さには、ただの優しさ以上の何か――私を守ろうとする確固たる決意が宿っている気がした。胸の奥が、急に熱くなる。
「――誰かに後をつけられているかもしれません」
悠真の声が、いつもよりわずかに低く、抑えた響きで響く。その一言に、私は思わず息を呑んだ。後をつけられている? そんな言葉、こんな穏やかな屋敷での生活には似合わない……はず。
だが、彼の真剣な表情と握る手の力強さに、背筋がぞくりと震えた。彼は私の手を引き、庭の外れにある木陰へと素早く移動する。
その動きは、まるで訓練されたように滑らかで、いつも見る穏やかな悠真とは異なる一面を感じさせた。
「ここは安全です。少し待っていてください」