私の婚約者は隠れSP!? 〜毎日が甘くて溶けそうです〜
夕方、悠真が私を迎えに来た。リビングの大きな窓から見える庭園は、夕焼けのオレンジ色に染まっていた。彼は軽く微笑みながら、手を差し出す。
「そろそろ散歩に出ませんか? 庭園の方を案内します」
その手は、大きくて温かそうだった。私は一瞬躊躇したが、なぜかその手に触れたい衝動に駆られた。そっと手を重ねると、彼の指が私の手を優しく包み込む。
温もりが、まるで心の奥まで伝わってくるようで、胸がぎゅっと締め付けられる。
「手、握ったままですけど……」
思わず小さな声で言うと、彼はくすっと笑い、いたずらっぽく目を細めた。
「君が不安なら、握っていた方が安心でしょう?」
その言葉に、顔が熱くなる。冗談めいた口調なのに、どこか真剣な響きがあって、胸の鼓動が速まる。
こんな風に甘くされるなんて、想像していなかった。政略婚のはずなのに、まるで恋人同士のような空気が漂う。この距離、この温もり――すべてが、私の心を揺さぶっていた。
庭園を歩きながら、彼は花の名前や庭の歴史を静かに語ってくれた。その声は穏やかで、まるで子守唄のようだった。私はただ頷きながら、彼の横顔を見つめていた。整った顔立ち、時折風に揺れる黒髪、知的な瞳に宿る柔らかな光。
どうしてこんな人が、私の婚約者なのだろう。心のどこかで、こんな幸せは自分には似合わないと囁く声があった。それでも、彼の隣にいるこの瞬間だけは、その声を忘れていられた。