私の婚約者は隠れSP!? 〜毎日が甘くて溶けそうです〜
指先が触れるたびに、胸の奥がちくりと熱くなる。こんな距離、こんな感触――心臓が速まるのを抑えられない。
「は、はい……」
声がかすれる。顔が熱い。悠真はそんな私の様子に気づいているのかいないのか、ただ穏やかに微笑むだけだった。
「こうやって持つと、切りやすいですよ。ほら、やってみて」
彼の手が離れると、なぜか少し寂しい気持ちが胸をよぎった。それでも、私は彼の言う通りに野菜を切り始める。彼は私の隣で、さりげなくサポートを続けた。トマトを切る私の手が少し滑ったとき、彼はすぐに手を添えてくれた。
「大丈夫、ゆっくりでいいですから。焦らなくていい」
その言葉に、胸が温かくなる。政略婚の相手なのに、こんなにも丁寧に、優しく接してくれるなんて。心のどこかで、これはただの気遣いだとわかっている。でも、彼の指先が触れるたびに、胸の奥で何かが揺れ動くのを否定できなかった。