愛妾を抱く冷徹皇太子に嫁ぎましたが、逆転して唯一の妃になりました
翌朝、まだ身体に昨夜の余韻が残るうちに、侍女長のマリアが部屋へと入ってきた。

銀の盆に載せられた朝食を運びながら、彼女は凛とした表情を崩さない。

まさか――あんなにも激しい夜を共にした相手と、何事もなかったかのように同じ卓で朝食を口にすることになるとは思わなかった。

私がうつむいていると、マリアは毅然とした声で問いかける。

「初夜は滞りなく済みましたか。」

一瞬、胸が詰まる。

こんなことを面と向かって聞かれるなんて……。

頬が熱を帯びる私に代わり、ラファエルが淡々と口を開いた。

「ああ、済んだ。」

それはまるで儀式の確認事項に答えるかのようで、夫婦の情など微塵も感じられない。

私の胸が冷たく締め付けられる。

さらに彼は平然と続けた。

「証拠ならそこにある。」

指先が向けられた先――それは、昨夜私が流した血を染み込ませたシーツ。

私は息を呑み、顔が真っ赤に染まる。

まるで自分の純潔を見せつけられているようで、羞恥に身が震えた。

ラファエルは私を気遣うことなく、ただ当然のように告げるのだった。
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