愛妾を抱く冷徹皇太子に嫁ぎましたが、逆転して唯一の妃になりました
朝食を終えた後、部屋を出て行こうとするラファエルを、私は思わず追いかけていた。

「ラファエル……」

「何だ。」

振り返った彼の表情には、やはり微笑みの欠片もない。

冷たい視線に心が震える。それでも、どうしても確かめたかった。

「もしかして……初夜は、あの純潔の印が必要だから?」

問いかけると、彼はわずかに眉を動かし、淡々と答えた。

「他に何があるんだ。」

唖然とした。――あれは形式のためだけだったのか。

せめて一夜だけでも、愛を与えてくれたのだと思いたかったのに。

胸の奥に、言いようのない痛みが広がっていく。

何も言えずに立ち尽くす私に、ラファエルはさらに冷酷な言葉を落とした。

「……昨夜、子種を出した。」

「っ……!」顔が熱くなる。

「妊娠していなければ、また俺のところへ来い。」

その言葉は愛ではなく、義務の確認。

私は打ちのめされるような思いで彼を見つめることしかできなかった。
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