愛妾を抱く冷徹皇太子に嫁ぎましたが、逆転して唯一の妃になりました
すると突然、部屋の扉を叩く音がした。

「……俺だ、イリス。」

胸が跳ねる。急いで扉を開けると、そこに立っていたラファエルは、やはり無表情のままだった。

氷のように冷たい瞳が、ただ静かに私を見下ろしている。

「マルグリットから聞いた。お前に会ったと。」

その一言に、思わず息を呑んだ。――やはり、彼女は特別なのだ。

私は小さく頷くことしかできなかった。

すると彼は淡々と告げる。

「気にするな。お前はいずれ王妃になる身だ。」

その言葉に、私ははっとする。

そうだ、どれほど愛されても、マルグリットは王妃にはなれない。

正妃の座に座るのは、血統を持つ私だけ――その事実が胸を鋭く貫いた。

だが次に落とされた言葉は、冷水のように私を打ち砕く。

「お前はお前の義務だけ果たせ。」

淡々と、まるで情の欠片もない声音。

私は唇を噛みしめ、込み上げる涙を必死で押し殺した。

泣くことさえ許されない。諦めの中で、胸の奥に小さな決意だけが芽生えていた。
< 15 / 15 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:2

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

一途な社長に溺愛を教え込まれた夜

総文字数/34,099

恋愛(オフィスラブ)92ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
営業部の高梨美優(28歳)は、重要な取引先との会合で大きな失敗をしてしまう。契約を失い、自責の念に駆られた美優は社長の黒瀬慧(35歳)に謝罪するが、慧は彼女を責めるどころか「次を取ればいい」と励ましてくれた。 新規営業を命じられた美優は、なぜか慧自ら同行することに。持ち前の明るさと慧の卓越した交渉力によって大型契約を獲得し、二人の距離は少しずつ縮まっていく。仕事帰りに食事へ連れて行かれたり、自宅まで送ってもらったりするうちに、美優は冷徹と噂される社長の優しさに惹かれていった。 そんな中、慧に同行して出席したパーティーで再び失敗してしまう美優。落ち込む彼女は「お詫びに何でもします」と口にするが、慧は真っ直ぐな瞳で彼女を見つめる。 「社長が好きです」 すると慧は優しく抱きしめ、長年隠していた本心を告げた。 「俺はずっとお前を見ていた」 失敗ばかりで自信のなかった女性が、一途な社長の深い愛に包まれ、本当の幸せを見つけていく溺愛ラブストーリー。
表紙を見る 表紙を閉じる
エルドリア王国の第一皇女フィオナ・エルネストは、敗戦国ヴァルティエ帝国の第二皇子ノア・ヴァルティエが人質として王宮へ送られてきた日、恋に落ちてしまう。 敗者でありながら誇りを失わず、敵国の王の前でも毅然と振る舞うノア。 その気高い姿に心を奪われたフィオナは、孤立する彼を放っておけず、少しずつ距離を縮めていく。 しかしノアは、自分が敗戦国の皇子であることを理由に想いを押し殺し、フィオナから離れようとする。 それでも互いの気持ちは抑えきれず、やがて二人は結ばれる。 だがその恋は王の知るところとなり、フィオナには隣国への政略結婚が命じられてしまう。 愛する人と引き裂かれそうになる中、ノアはフィオナとの結婚を王に願い出る。 さらに兄である王太子レオニスとの決闘に挑み、その覚悟と愛を証明することに。 敵国同士という立場を越え、皇女と敗戦国の皇子は真実の愛を貫くことができるのか。 これは、一途な皇女と誇り高き皇子が紡ぐ、切なくも甘い溺愛ロマンス。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop