愛妾を抱く冷徹皇太子に嫁ぎましたが、逆転して唯一の妃になりました
結婚式の前日、私はついに王宮へと足を踏み入れた。

華やかな宮廷の空気に包まれながらも、胸の奥は重苦しい不安で満ちていた。

玉座の間で迎えに現れたラファエル皇太子は、やはり噂どおりの冷徹な眼差しをしていた。

「よく逃げなかったな。」

吐き捨てるようなその言葉は、歓迎の挨拶ではなく、冷たい試練のように響いた。

婚約期間中、彼が私の元を訪れたのはわずか一度だけ。

その時も愛妾の存在を隠そうともしなかった。

ウェディングドレスの打ち合わせや式の詳細に関しても、一切関わろうとしない。

まるで私がそこに存在していないかのようだった。

「王命ですから。」

私は深く頭を下げ、礼儀だけを尽くした。

皇太子の態度に傷つきながらも、公爵家の令嬢としての誇りだけは手放せない。

部屋に案内され、静かに荷物を解いていると、いつの間にかラファエルの姿は消えていた。

声をかけるでもなく、気遣う素振りすら見せずに。

――ああ、やはりこういう人なのだ、と私は胸の奥で呟いた。
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