愛妾を抱く冷徹皇太子に嫁ぎましたが、逆転して唯一の妃になりました
そしてその日、ついに初夜が訪れるはずだった。

だが肝心のラファエル皇太子は、どれだけ待っても姿を見せない。

豪華な寝所に一人残された私は、用意された薄いナイトウエアのまま、広すぎるベッドの上にぽつりと座っていた。

初夜に放っておかれる花嫁――そんな話があるだろうか。

胸にこみ上げるのは、屈辱と虚しさばかりだった。

王命によって嫁いだとはいえ、形ばかりの結婚。

彼の心には最初から私の居場所などないのだと、改めて思い知らされる。

それでも、ベッドに横たわり、疲れと緊張から瞼が重くなっていく。

うとうとと浅い眠りに落ちかけた、その時――。

「イリス、起きろ。」

突然、部屋の扉が乱暴に開かれ、肩を揺さぶられる感覚に目を覚ました。

視界に飛び込んできたのは、冷徹な瞳を光らせたラファエル皇太子の姿だった。

胸が大きく跳ねる。来ないと思っていた人が、なぜ今ここに――?
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