愛妾を抱く冷徹皇太子に嫁ぎましたが、逆転して唯一の妃になりました
「遅くなってすまない。友人たちのお祝いに戸惑ってしまった。」

低い声がそう告げると同時に、ラファエル皇太子の大きな手が私の頬に触れた。

冷徹と呼ばれる彼からの、あまりにも唐突な優しさに心臓が跳ね上がる。

「今日は初夜だからな。……優しく抱いてやる。」

その言葉と共に、彼の顔が近づき、唇を重ねられた。

情熱的で、抗えないほど強い口づけ。熱に呑まれ、思わず息が漏れる。

「ぁぁ……」

キスだけで身体が震え、胸の奥が熱を帯びていく。

触れられただけで、こんなにも甘い感覚に支配されてしまうなんて。

彼の指がナイトウエアの紐を解き、布地が音もなく滑り落ちる。

露わになった肌に触れられると、初めて味わう感覚に背筋が大きく震えた。

――これが、女としての幸せなのだろうか。

長い未来を共にするはずの夫に抱かれる夜。

愛されているかどうかも分からないのに、私はただ、このひとときに酔うしかなかった。
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